第二十二話 主天その十五
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「気にしなくても相手はもうここにいるからな」
「相手はか」
「二人連れて来たぜ」
まずはこう言ってきたのであった。
「おい」
「はい」
ロッカーが呼ぶとだった。不気味な顔の騎士が二人の前に出て来た。彼はその首を右手の脇に抱えている。その騎士が出て来たのであった。
「デュラハンか」
「似てるけれど少し違うな」
ロッカーは死神の言葉にまた答えた。
「首なし騎士っていってな。それがこいつの名前なんだよ」
「覚えておくことだ」
その小脇に抱えた首からの言葉だった。
「冥府に旅立つ前にな」
「まずはこいつか」
「そしてもう一人は誰だ?」
牧村がロッカーに対して問うた。
「二人いると今言ったが」
「ああ、次はこいつだ」
この言葉と共にもう一人出て来た。今度は一つ目に烏の目を持った長い髪に緑の肌を持つ異形の者だった。しかもその指は四本である。
「こいつは影喰らいっていうんだ」
「覚えておけよ」
影喰らいと呼ばれた魔物は不気味な笑い声をあげながら二人に告げてきた。
「俺様が御前等を倒すからな」
「その二人のうちどちらがだ」
「私の相手をするのだ?」
「好きな方を選ぶんだな」
ロッカーはここでも楽しそうな笑みと共に二人に告げてみせた。
「どっちでもいいんならいいけれどな」
「ふん」
「ならばだ」
二人は魔ロッカーの言葉を受けてまずは一歩前に出た。最初に動いたのは牧村だった。
「俺の相手はだ」
「私か?」
「それとも俺様か?」
「貴様の相手をしてやる」
こう言って指差したのは首無し騎士だった。
「貴様だ。相手をしてやる。光栄か?」
「光栄そのものだ」
彼の言葉にこう返す魔物であった。
「髑髏天使と手合わせできるのだからな」
「それでか」
「そして冥府に旅立たせることができる」
魔物の言葉に鋭いものも宿った。
「これ以上のことはない」
「では決まりだな。貴様の相手は俺だ」
「うむ」
「となるとだ」
死神は二人のやり取りを横目に影喰らいを見ていた。その異形の姿をした一つ目の魔物をじっと見ているのである。そのうえで言うのであった。
「自然と決まったな」
「そうだ。俺様だ」
「覚悟はいいか」
その一つ目を見据えながらの言葉である。
「冥府に行く用意はな」
「それは貴様ではないのか」
魔物はその声だけを笑わせながら彼に言い返してみせた。
「俺様に倒され冥府に旅立つのは」
「生憎だが死神が倒されたことはない」
死神は魔物の不遜な言葉にも動じてはいなかった。
「死神は冥府を行き来しても旅立つことはないのだ」
「それならばだ」
「来るのだ」
死神の相手もここで決まった。
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