第二十二話 主天その十一
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「よお」
「今日の授業何処からだった?」
「少し待ってくれ」
言いながら牧村はまず席に座った。それから左手に持っていた鞄から教科書とノート、それに袋の筆箱を出してきた。そのうえでまずは教科書を開いた。
「ここからだ」
「ああ、そこからか」
「そこからなんだな」
彼等は彼が開いたそのページを見て頷きながら言った。
「先週休講だったからな」
「一週間講義がないと何処からかわからないな」
「そうだよな」
こんな話をしながら牧村の席の周りに座っていく。そうして彼等もそれぞれの鞄から教科書やノートを出して勉強の用意をするのだった。
「そこが高校までとは違うよな」
「全くだぜ」
「しかもな」
彼等はそれぞれ言うのだった。ペンも出しながら。
「講義結構気が抜けてるよな」
「そういうところあるか?」
「あるよな」
そんな話もするのだった。
「高校とか結構気が張ってたけれどな」
「こうした英語の授業なんか特にな」
「全然だよな」
「全くだ」
こんな話をしながらだった。彼等は準備を終えるのだった。
「まあ楽っていえば楽だけれどな」
「単位簡単に取れるしな」
そんな話もする。
「学校の授業より内容も面白いしな」
「特にこの話な」
言いながら金髪が教科書のあるページを開いた。そこは。
「この話な」
「ああ、それな」
「小泉八雲だったな」
見ればそれは狢の話だった。のっぺらぼうのその話である。
「俺これ日本語の読んだことあるぜ」
「ああ、原作か」
「それ読んだんだな」
「結構面白かったぜ」
こんな話もする。
「だからわかりやすかったな」
「ああ、やっぱり原作を読んでるとわかりやすいよな」
「そうだな」
続いてそんな話をする。
「それでよ、牧村よ」
「御前はどうなんだ?」
「読んだことあったか?これ」
言いながらその狢の話のページを出して話してきた。
「これな」
「あるか?」
「ある」
こう答える牧村だった。
「高校の時にな」
「へえ、御前も読んだことあるのか」
「小泉八雲読むんだな」
「小泉八雲は好きだ」
牧村はいつもの口調で答えた。
「家には全集がある」
「全集ってまた本格的だな」
「やっぱりあれか?御前が買ったのか?」
「いや、祖父さんが好きだった」
ここで自分の祖父のことを話に出してみせた。
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