第二十二話 主天その十
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「夏はこの人がいれば問題なし」
「クーラーは必要ないよ」
「扇風機もね」
雪女だからだというのだ。今の話はまさにそこにあった。
「だからどうかな」
「彼女に」
「生憎だが」
しかし牧村はここで言うのだった。
「彼女はもういる」
「いるんだ」
「嘘でしょ」
「いやいや、これが嘘ではないのじゃ」
博士が今の牧村の言葉に驚く妖怪達に対して告げた。
「これがのう」
「だってさ。牧村さんってさ」
「ちょっと」
妖怪達は菓子を食べ続けながら博士の今の言葉に返す。
「そういう感じじゃないし」
「彼女というか人付き合い自体が少なそうじゃない」
「これで友達も多いのじゃぞ」
博士はこのことも話すのだった。
「ちゃんとのう。それなりにおるぞ」
「こんなに無愛想で?」
「それでなの」
「そうじゃよ。確かに言葉遣いは素っ気無いが」
博士もそれは否定しない。芋羊羹を食べながら語っていく。
「それでもじゃ。別に腹黒くもなければ嘘もつかんし意地の悪いところもないじゃろ」
「確かにね」
「これで結構気も利くし」
妖怪達も牧村のそうしたところは知っていた。実は性格は悪くないのだということをだ。
「だから彼女がいるんだ」
「友達も」
「そういうことなのじゃ。まあかなり変わり者じゃがな」
「変わっていてもどうということはない」
その牧村は彼等の話の間ずっと芋羊羹と抹茶を飲み食いしていた。そうしてそのうえで彼等のやり取りを聞いているのだった。
「別にな」
「こういう人だからねえ」
「誤解され易いのは確かだね」
「それは間違いない」
博士もこのことは認めるのだった。
「わしはまあこういう人間もいると思っただけじゃが」
「それだけだったんだ」
「僕達随分変わった人達がいると思ったけれど」
彼等も彼等で随分なことを言う。
「まあ性格はね」
「悪くないのは間違いないしね」
「さて、それではだ」
ここで丁度芋羊羹と抹茶を全て平らげた牧村が動いた。
「もう行かせてもらう」
「あっ、講義!?」
「もうそんな時間なんだ」
「行って来る」
こう告げて皿と湯飲みをすぐ側にあった容器入れに入れた。そのうえでろく子に顔を向けて告げた。
「悪いが洗いものは頼む」
「わかりました」
ろく子がにこりと笑って彼に答えた。
「それじゃあ行ってらっしゃい」
「それではな」
「学生の本分は学問じゃ」
その学者の博士の言葉だけあって説得力のあるものだった。
「頑張るのじゃぞ」
「わかっている。それではな」
こう話してそのうえで部屋を後にする。そうしてキャンバスの中を進みそのうえで教室に入った。今彼が入った教室は三十人程度が入られる大学の教室にしては幾分かコンパクトな教室だった。そこ
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