暁 〜小説投稿サイト〜
弱者の足掻き
十話 「登っているのか降りているのか」
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
カジ少年はノリツッコミをしつつ蹴りかかってくる。元気いいなこいつ。
 受け取ったサンドイッチをほおばり無言になったカジ少年をよそに他の連中が寄ってくる。


「何頼んだのイツキー」
「ん? ああ何日か俺がカジの家に泊まるって口裏を――」
「カジの家泊まんの? いいなオレも泊まってさわぎたい」
「いやだから実際は泊まって――」
「オレらも泊まろうぜハリマ。なあカジいい?」
「皆でカジんち行くかー」


 話を聞けキサマら。あと少女を巻き込むんじゃない。その子引っ込み思案だから誘われて嬉しそうだけどお前らの集まりとか絶対後悔するから。
 まだサンドイッチが食べきれていないカジ少年は頬にマヨネーズを付けたまま無言で親指を立てオッケーを示す。親に聞けよそこは。


「それで、イツキくんは何頼んだの?」


 いい質問だ少女よ。他の連中だとラチあかないからこっからは君の質問だけ答えよう。


「カジの家で何日か泊まってるってことにして欲しくてな。その口裏合わせてくれって頼んだんだ」
「家の人には言わないの?」
「まあね」
「何で? 何するの?」
「家出」


 まあ嘘だけど。
 その言葉に興味深そうな顔を少女は浮かべる。他の連中も面白そうな顔をしてどこに行くだのなんだの聞いてくるがあいにく少女以外の質問に答えるつもりはない。

 
「いいなー楽しそう。白ちゃんも一緒?」
「ええ、一緒です」
「何処行くの? 教えて教えて」
「それは、その……」
「秘密。まあ数日で戻ってくる予定」
「いいなーいいなー。そういうの凄く良い。何か冒険、って感じするよね」


 目を煌めかせた少女は期待に満ちた想像を浮かべ嘆息する。
 落書きの時に話を聞いたがこういった事に憧れているのだ。俺自身そういった思いはわかる。特にこの年頃なら大人のいない時間や空間、自分だけで何かするということに憧れている時期だ。

 
「まあそういう訳だから俺と白は暫く出かける。何か聞かれたら口裏合わせてくれると助かる」
「白ちゃんもなんだいいな。分かった、了解しました!」
「ありがとう。後で何か礼するよ」


 敬礼みたいに軽く手を頭にあげ元気よく了承してくれた少女の笑顔が眩しい。
 サンドイッチを食べ終わったカジ少年がやっとこさ口を開く。


「イツキこれ何の肉?」
「猪の肉。白がチャーシュー作った」
「いろいろ試してみようと思いました。味はどうでしたかカジ君?」
「美味い。もっとくれ!」
「ねぇよ」


 お手軽チャーシューを作ってみたのだが意外に好評だ。取った肉は多くて処分に困るのでレパートリーが増えるのは助かる。
 伸ばされた手を叩かれたカジ少年はつまんなそうに呟きながら手を引っ込める
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ