十話 「登っているのか降りているのか」
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俺を見る。
それは酷く真っ当な感情と疑問で優しい白は俺にそれをぶつける。
「変えるつもりはない」
「ですが……」
「『ですが』じゃねぇよ」
だがその疑問をわざわざ受け入れるつもりもないし辞めるつもりも更々ない。何を勘違いしているのだコイツは。
白の顔を鷲掴み壁に押し付け、驚きに震えている白に顔を近づける。
「そりゃ前にいったよ俺は。自分で考えていいし俺の言うことに逆らっても良いってさ。でもそれは最終的に『俺の利益』になるか『邪魔をしなければ』って言ったよな。で、今回どんな理由があるの?」
「それは、その……」
無いだろうねそりゃ。お前の良心が原因なんだからさ。でもそれいらないから。
「割り切れよ。お前何だっけ?」
叛意はいらない。名前すら呼ばない。
暴力でなく精神で。存在を問う言葉をぶつけられた白は一瞬震え、そして直ぐに穏やかな顔で口を開く。
「イツキさんの道具……です」
「その通り」
満足のいく言葉が聞けて白を解放しその頭を撫でる。
最近こういうことしていなかったいい薬になるだろう。鞭と飴は定期的にやらなくては相手が勘違いしてしまう。白の場合は大丈夫だと思うが、それでもしないよりはいい。
「罪悪感なんか俺に押し付けろよ。俺に言われたからやった、命令されたからだって。お前が優しいのは知ってる」
「分かりました」
ふと昔どこかで聞いた質問が思い浮かぶ。戦場で戦う兵士が何故敵を殺すのかというもの。一番多かった理由は『命令されたから』だとか。理由を外に預けるというのは気が楽になる行為だ。
「さっきは悪かったな。ちょっと気が荒れてるらしい」
「僕は大丈夫ですから気にしないで下さい」
「助かる。これからも意見があったらドンドン言ってくれ。裏切ったりしない限り白の好きにな事していいし、俺の為になるなら俺なんて無視して自分の意志で動いてくれていい。言うこと聞くだけの人形はいらん」
「裏切ったりなんかしませんよ。存分に使ってください」
「その点は信頼してるよ」
時計を見れば既にカジ少年たちと会う予定の時間だ。そろそろ動いたほうがいい。
「行くぞ。カジ少年に頼んだ件がどうなってるかにも関わるしな」
「おーいイツキ、泊まるの大丈夫だぞー!」
ブンブンと手を振って己の存在を誇示しながらカジ少年が言う。
いつもの広場にいるのはいつもの連中だ。呼んだ覚えもないのに何故かいるのが不思議だ。
「本当か。助かる」
「おう! ごまかすくらい楽勝だぜ」
「よくやった。ほーらお駄賃だぞ〜」
「わーい、ってアホか!」
差し出したサンドイッチを前に
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