第二十二話 主天その八
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「違うのじゃ」
「違うってどういうふうに?」
「その革命をしようって人と牧村さんはどう違うの?」
「革命は自分達で勝手に敵を名指ししてそれで殺すものじゃ」
それが革命である。敵は貴族であったりブルジョワであったり地主であったりユダヤ人であったりする。自分達で敵を作りそのうえで革命の際に殺戮するのである。実際にこれにより歴史上多くの血が流れている。それもまた人間の歴史の一ページである。
「それが革命じゃ」
「ああ、じゃあ髑髏天使と違うね」
「確かに」
「それって全然違うよ」
妖怪達は今の博士の言葉でわかったのだった。
「牧村さんってそういうことしないもんね」
「魔物は自分達から向かって来るし」
「それで受けて立つ形だし」
「自分から敵を名指しして攻撃しないし」
「そういうことはないからね」
「俺は魔物とは戦い倒す」
牧村も言った。
「だが殺戮はしない。敵といえどな」
「倒すけれど殺戮はしない」
「そういうことだね」
「その通りだ。俺は革命家ではない」
彼はまた言うのだった。
「髑髏天使だ。それだけだ」
「そうだよね。牧村さんは髑髏天使だよね」
「あくまで革命家じゃないね」
「革命家は敵の殺戮の後で自分達同士で殺戮をしていくからのう」
博士は今度はこうも述べるのだった。
「仲間内でのう」
「ああ、今度は自分達の中で敵を作ってやっていくんだ」
「そういうことだね」
妖怪達はもう話がわかった。
「それで殺し合うってことか」
「身内でも」
「そういうことだ。あの連中は何処までも殺し合う」
牧村の言葉もその通りだった。革命家という存在は敵を粛清すればそのうえで次は自分達の中で粛清をはじめるのだ。これはジャコバン派もそうだったしナチスやソ連もだ。彼等は所謂共食いをするのだ。なおあの北朝鮮の金日成もそうして多くの人間を殺している。
「最後に残るものは何もない」
「そうだね。殺してばかりじゃね」
「何も残らないよ」
「その通りだよ」
妖怪達は牧村の今の言葉にも頷いた。
「牧村さんは髑髏天使」
「それだね、やっぱりね」
「そうだね」
そのうえでまたこのことを確かめることになった。
「じゃあさ」
「いいかな」
「どうした?」
「はい、これ」
「これも食べてよ」
こう言ってまた菓子を出してきたのだ。芋羊羹だった。
「これたっぷりあってね」
「もうどんどん食べてよ」
「遠慮はいらないよ」
「芋羊羹が多いな」
思わず言ってしまった牧村だった。その芋羊羹を見ながら。
「随分とな」
「食べるの?それで」
「どうするの?」
「いらなかったら僕達が貰うけれど」
こうした言葉も一緒だった。
「僕達も大好きだしね、これ」
「だからさ。どうするの?」
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