第二十二話 主天その六
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「全くのう」
「っていうか明治天皇知ってるっていうか御会いした人って」
「人間じゃね。とてもね」
「生きていないよね」
「今はね」
自分達はともかく、という妖怪達の言葉であった。
「博士も人間としてはかなり長生きだけれどね」
「そこまではね」
「昭和天皇とは御会いできた」
「御幾つの時だ」
「陛下が皇太子の頃にも即位されて軍服を着ておられた時もだ」
つまり戦前ということである。
「当然背広であられる時ものう」
「つまり何度も御会いしてるんだ」
「結構凄くない?」
「お声をかけて頂いたこともある」
それもあるというのである。
「有り難いことにのう」
「お声をか」
「そうじゃ。終戦直後全国を巡幸されていた時にじゃ」
その時にだというのだ。この御巡幸が国民にとって非常に心強い支えになったことはあまりにも有名だ。なおこの時日和見主義者達はスターリンを賛美しだしていた。
「その時にお声をかけて頂いた」
「そうだったのか。有り難いことだな」
「うむ。しかしじゃ」
博士はここまで話したところで牧村に顔を向けて声をかけてきたのだった。
「君も意外じゃな」
「意外?」
「そうじゃ。皇室を尊敬しているのじゃな」
「それが悪いのか」
「いや、悪くはない」
それを聞いても悪いとはしない博士だった。
「むしろいいことじゃ。だから意外なのじゃよ」
「意外か」
「そうじゃ。意外じゃ」
そのこと自体を意外というのである。
「国家とかそうしたことには興味がないと思っておったがのう」
「俺も日本人だ」
牧村は今度は饅頭を貰っていた。それを食べながら応えていた。いつも通り背中を部屋の壁にもたれかけさせてそのうえで話している。
「国家や皇室にはそれなりの敬意を持っているつもりか」
「ふむ。そうか」
「博士もそうなのだな」
「わしは日本人じゃぞ」
このこと自体に答えがあるかのような言葉であった。
「日本人が国家や国家元首であられる皇室に敬意がなくて何なのじゃ」
「世の中には国旗を切り裂く日本人もいる」
牧村はそうした輩のことも述べた。
「それも政党としてな」
「その連中は日本人ではないのじゃろう」
博士は牧村のその言葉に忌々しげな口調で返したのだった。
「そうとしか思えん」
「だが国籍は日本人だが」
「国籍が日本人でも心が日本人でなければ日本人ではない」
ここでも実に忌々しげな口調であった。それを隠すこともしない。
「何処かの独裁国家の人間じゃろう」
「何処かのか」
「そうじゃ。どっちにしろその様な輩はわしは好かん」
はっきりと言い切る博士だった。
「わしとて最低限日本人としての心は持っておるつもりじゃからな」
「学校の教師には少ないがな」
「教師こそ
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