第二十二話 主天その五
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「だからさ、芋羊羹食べようよ」
「その美味しいお芋をね」
「どうぞどうぞ」
言いながらその切ってきた芋羊羹を彼の前に出す。牧村はその芋羊羹を受け取ってそのうえで答えるのであった。
「有り難う」
「じゃあ食べて」
「美味しいよ」
「確かにな」
早速その芋羊羹を食べてみて答える牧村だった。落ち着いた甘さでしかも上品な味だ。その落ち着いた上品な芋羊羹を食べながら言うのだった。
「この芋羊羹はかなり」
「いいものだ。それでだ」
「うん」
「まだ食べる?まだまだあるよ」
「そんなにあるのか」
見れば次から次に切ってそのうえで食べている妖怪達だった。
「芋羊羹は」
「だから甘いものも大好きだしね」
「たっぷり買ったんだ」
「そうだったのか」
「ほら、本当にどんどん食べてよ」
「遠慮はいらないから」
さながらわんこそばの様に芋羊羹を出して来る彼等だった。
「美味しいよね、本当に」
「だから何切れでもね」
「何なら一本丸ごといく?」
こうまで言うのだった。
「ほら、ここに一本丸ごとあるよ」
「どう?」
「そこまではいい」
牧村はその申し出は断ったのだった。
「おかわりは欲しいがな」
「それじゃあ分厚く切ったこれをね」
「どうぞどうぞ」
実際にこれまでの倍は分厚く切っている芋羊羹を出してきたのだった。
「やっぱり羊羹は分厚く切らないとね」
「美味しくないからね」
「羊羹は御馳走なのじゃよ」
見れば博士もおかわりをしていた。その芋羊羹を次から次に口の中に入れている。百歳を超えているとは思えない食欲だった。
「あの明治帝も大好物じゃった」
「あの方もな」
「帝は甘いものがお好きじゃった」
このことはかなり有名である。それを牧村に語るのだった。
「羊羹の他にもカステラにアイスクリームにアンパンといったものがお好きじゃった」
「本当に甘党だったんだね」
「そうだね」
妖怪達もそれを聞いて言い合うのだった。
「僕達もそういったの好きだけれどね」
「それと一緒だね」
「質素を好まれる方じゃったが同時に甘いものもお好きじゃった」
「そうだったのか」
「お好きでも一切れずつじゃった」
このことも話す博士だった。
「召し上がられるのはのう。いつもそうじゃった」
「本当に質素だったんだ」
「確かに」
「わしは残念ながら生前には御会いできなかった」
「できたのではなかったのか?」
牧村はここでこう博士に問うた。
「博士は確か一二〇歳ではなかったのか」
「いや、百歳じゃよ」
しかし博士はこう彼の言葉に返したのだった。
「明治帝御存命の折には御姿を見ることもできなかったのじゃよ」
「そうだったのか」
「残念なことじゃ」
そしてこう言いもするの
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ