第二十二話 主天その四
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「滅茶苦茶美味しいからだ」
「是非食べてよ」
「わかった」
丁度団子を食べ終えた牧村はそのキンツバとドラ焼きも受け取ったのだった。そしてその二つも口の中に入れて楽しむのだった。
「確かに美味いな」
「山月堂のだからね」
「やっぱりあそこのは美味しいよ」
「そうじゃのう。あそこの若様も好青年じゃしのう」
見れば博士もだった。彼も田舎饅頭を食べて御満悦であった。
「その若旦那の作ったものじゃよ」
「そうだったのか」
「そうじゃよ」
牧村に対してそうだと語るのだった。
「いいじゃろ。これも」
「確かにな」
そのキンツバとドラ焼きこそが何よりの証拠だった。
「この味は見事だ」
「流石に味がわかるね」
「牧村さんだけはあるね」
妖怪達はキンツバとドラ焼きを褒める彼を見て言ってきた。
「やっぱりここの味はしっかりしてるよね」
「しかしあそこの若旦那って」
妖怪達はその彼のことも話すのだった。
「巧いよね、作り方が」
「まだ若い筈なのにね」
「いや、これが中々」
「これからが楽しみじゃな」
博士もまた田舎饅頭を食べながら言うのだった。
「ここまで見事なものをあの若さで作ってくれるとな」
「じゃあもっと食べる?」
「そうする?」
妖怪達は今度は芋羊羹を出したのだった。出したそのすぐ傍から切っていく。
「この芋羊羹もあの若旦那が作ったものだよ」
「どう?」
「では貰おうかのう」
博士はその芋羊羹を見て言うのだった。
「そちらものう」
「芋羊羹も大好きじゃ」
博士はそれもいいというのである。
「薩摩芋はよい食べ物じゃ」
「甘いしね」
「それに身体にもいいし」
どうやら薩摩芋は妖怪達にとってもいい食べ物であるらしい。彼等はその薩摩芋のことも笑顔で話しているのがその証拠になるものである。
「美味しいしね」
「食べがいもあるし」
「薩摩芋か」
牧村は彼等の話を聞いていてあることを思い出したのだった。
「そういえば俺もだ」
「ああ、牧村さんも食べるんだ」
「どうぞどうぞ」
「欲しいな。実はだ」
「うん」
「どうしたの?それで」
「最近薩摩芋を食べていない」
このことを言うのだった。
「薩摩芋を使った菓子もな」
「それはよくないよ」
「そうそう」
妖怪達はその言葉を聞いて残念そうに告げてきたのだった。
「薩摩芋を長い間食べないなんて」
「それってとても悲しいことだよ」
「悲しいのか」
牧村は今の妖怪達の言葉に僅かに首を捻ることになった。
「薩摩芋を食べないことは」
「美味しいものを食べないなんて」
「それだけで悲しいことだよ」
「全く」
こう話すのである。
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