第二十二話 主天その二
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「その為の強さだ。位そのものには興味がない」
「じゃあ今の力天使の力も」
「あくまで魔物を倒す為なんだ」
「そうでなければ位なぞ何の意味もない」
やはり位そのものには何の興味もない牧村だった。
「それよりもだ」
「強さだね」
「それだけ」
「強くなっている自覚はある」
それは誰よりも強く感じている牧村だった。
「だが。まだ強くなるな」
「そうじゃ。次は主天使じゃが」
「主天使か」
博士のその言葉にあらためて顔を向けた。
「今度はどんな力なのかのう」
「それはまだわからないか」
「今その主天使に関する文献を読んでおる最中じゃよ」
見ればまた極端に古い書物を読んでいる博士だった。パピルスで書かれたそれには何処のものか、何時の時代なのか容易にはわからない文字が書かれていた。
「解読はまだ先じゃ」
「難しいか」
「少し待ってくれると有り難い」
こう牧村に対して述べるのだった。
「この文字の解読は厄介じゃ」
「どの時代のどの文字だ」
「パピルスを使ってはおるが」
それ自体は古代エジプトのものである。エジプトではそこに独特のヒエログリフ等を使いそのうえで記録を残していたのである。
「しかし。この文字はのう」
「エジプトのものではないか」
「フェニキアの文字のようじゃ」
それだというのである。
「どうやらのう。そのようじゃ」
「フェニキアか」
「名前は知っておるな」
「小アジアに栄えた海洋民族だったな」
牧村は歴史の勉強で得た知識で博士に応えた。
「高度な航海技術と商才を持っていたな」
「それじゃ。カルタゴもその植民都市じゃった」
カルタゴ人はフェニキア人だったのである。これは歴史にある通りだ。
「そのフェニキアの文字じゃよ」
「それか」
「実はわしも解読にかかるのははじめてじゃ」
「この学校で読める人間はいるか」
「いいや」
牧村の今の問いには首を横に振って答えた。
「一人もおらん。残念じゃが」
「では博士だけか」
「それでもはじめてじゃからのう」
このことをまた言うのだった。
「実際に解読にかかるのは」
「だから難しいか」
「しかも厄介な文章じゃな」
今度は文章についても言及してきた。
「文字そのものも読みにくくなっておる」
「下手か」
「癖が強いのじゃ」
牧村の今の言葉をこう言い換えた。
「それも随分とのう。おまけに暗号の様にしておるわ」
「随分と手が込んでいるな」
「だから解読までちと待ってくれ」
「どれだけかかるかわからないか」
「はっきりとはのう」
博士も首を捻ってしまった。
「すまんがのう」
「別に急ぎはしない」
牧村もそれにはこだわらない姿勢を見せた。
「じっくりとやってくれ」
「よいのか?
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