第二十一話 人狼その二十二
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
牧村は妹のその言葉を受けて述べた。
「俺は何時までも御前を乗せて進む」
「頼むわね。それでね」
「それで。今度は何だ」
「有り難う、お兄ちゃん」
兄に顔を向けて見上げてにこりと笑っての言葉だった。
「その言葉忘れないわ」
「では行くぞ」
「ええ」
またにこりと笑って兄の言葉に頷くのだった。
「それじゃあ。行こう」
「飛ばすか」
「スピードはいいから」
別にスピードにはこだわらない未久だった。彼女にとっては車やバイクのスピードといったものは別にどうでもいいものであったのだ。だからこう返したのだった。
「安全運転で御願いね」
「何百キロ進んでも安全運転だが」
「何百キロも出して安全運転も何もないじゃない」
この辺りは案外厳しかった。
「そうじゃないの?」
「そういうものでもないが」
「そういうものよ。とにかくね」
未久は兄の言葉を遮るようにしてまた言ってきた。
「急がないからゆっくりでいいから」
「そうか」
「塾はじまるまでにはまだ時間があるし」
だからだというのだった。
「本当にゆっくりでいいのよ」
「わかった」
ここでようやく妹の言葉に頷いた。
「それでは。ゆっくりと行くぞ」
「御願いね」
こうして牧村は妹を乗せてそのうえで彼女の塾に向かうのだった。今の彼は妹が知る無愛想だが彼なりに優しい、そんな兄だった。
第二十一話 完
2009・8・27
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ