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髑髏天使
第二十一話 人狼その二十二
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 牧村は妹のその言葉を受けて述べた。
「俺は何時までも御前を乗せて進む」
「頼むわね。それでね」
「それで。今度は何だ」
「有り難う、お兄ちゃん」
 兄に顔を向けて見上げてにこりと笑っての言葉だった。
「その言葉忘れないわ」
「では行くぞ」
「ええ」
 またにこりと笑って兄の言葉に頷くのだった。
「それじゃあ。行こう」
「飛ばすか」
「スピードはいいから」
 別にスピードにはこだわらない未久だった。彼女にとっては車やバイクのスピードといったものは別にどうでもいいものであったのだ。だからこう返したのだった。
「安全運転で御願いね」
「何百キロ進んでも安全運転だが」
「何百キロも出して安全運転も何もないじゃない」
 この辺りは案外厳しかった。
「そうじゃないの?」
「そういうものでもないが」
「そういうものよ。とにかくね」
 未久は兄の言葉を遮るようにしてまた言ってきた。
「急がないからゆっくりでいいから」
「そうか」
「塾はじまるまでにはまだ時間があるし」
 だからだというのだった。
「本当にゆっくりでいいのよ」
「わかった」
 ここでようやく妹の言葉に頷いた。
「それでは。ゆっくりと行くぞ」
「御願いね」
 こうして牧村は妹を乗せてそのうえで彼女の塾に向かうのだった。今の彼は妹が知る無愛想だが彼なりに優しい、そんな兄だった。


第二十一話   完


                 2009・8・27
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