第二十一話 人狼その二十一
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「闘いがありそこで私達は会うのだ」
「貴様と闘うことになる可能性もあるかもな」
「前のようにだな」
「その時は手を抜くことはしない」
牧村の言葉には剣が宿っていた。
「絶対にな」
「それはこちらも同じだ」
ヘルメットの中からの言葉だ。
「私は相手を刈ることが仕事なのだからな」
「そういうことか」
「また会おう」
死神は言った。
「すぐにな」
「またな」
こう言葉を交えさせて別れる。死神と別れた牧村はサイドカーに乗った。それを駆り向かったのは妹の未久が通っている中学校だった。
学校の玄関に着くとすぐに。彼とサイドカーを見て中学校の生徒達が言うのだった。
「あっ、あれって」
「未久ちゃんのお兄さんかな」
「格好よくない?」
まずは彼を見ての話だった。
「何か決まってるわね」
「そうよね」
「ニヒルっていうのかな」
あくまで牧村の外見を見ての言葉だった。
「ああいうのって」
「そうよね。渋いし」
「ああいう人彼氏に欲しいわよね」
「贅沢言わない。あんたもういるでしょ」
女の子達はおおむね彼自身を見て話をしていた。しかし男の子達はまた違っていた。彼等が見ているのは牧村だけではなかった。
「乗ってるのって牧村の兄ちゃんか」
「相変わらず決まってるよな」
「そうだよな。特にあれがいいんだよな」
「だよなあ。あのサイドカー」
「最高だよな」
サイドカーも見ているのである。どちらをよりよく見ているかというとどうも言えなかった。どちらについても話されているのは間違いなかった。
「あれって高いのかな」
「高いだろ」
「それにいつも奇麗にしてるよな」
「見ろよ、あの横の席」
サイドカーをサイドカーたらしめているものだった。その横の席である。彼等はそれも見てひそひそというにはかなり大きな声で話していた。
「あそこに乗ってみたいよな」
「ああ、俺は運転するのもいいけれどな」
「サイドカーもいいよな」
「ああいうの乗れたら最高だぜ」
「全くだ」
そんな取りとめのない話をしていた。そんな話をする中未久が校門に出て来た。彼女は兄の姿を見るとまずはこう言った。
「人だかりができてるって思ったら」
「迎えに来た」
少し困った声を出す妹に素っ気無く返した。
「帰るぞ」
「今日塾なんだけれど」
「では塾に行く」
こう返すだけだった。
「それでいいな」
「ええ。それにしても目立つわね」
今度は苦笑いを兄に見せる未久だった。
「サイドカーって」
「目立つのならそれでいい」
構わないといった口調だった。
「気にしないだけだ」
「その態度は本当に相変わらずね」
呆れもする。だがそれでもサイドカーのその横の席に向かいその中に入るのだった。
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