第二十一話 人狼その十七
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「それだけではな」
「というと」
「見るのだ」
言うとであった。その鎌に炎が宿っていた。赤い紅蓮の炎である。
「確かに貴様の身体は硬い」
このことはもう言うまでもなかった。
「だが。炎ならばどうだ」
「それで私を焼くつもりかしら」
「そうだと言えばどうする?」
「やってみるといいわ」
魔物はその紅蓮の炎を見ても余裕を変えない。
「果たしてそれで私を倒せるのかね」
「では見せてやろう」
死神もその言葉を受けて述べた。
「この炎で貴様を倒す」
「ただの蝿ならいざ知らず」
魔物の声がまた笑った。
「この私を炎で倒せるとは思わないことね」
「ただの炎ではか」
「そうよ。ただの炎で私を倒すことはできないわ」
自信に満ちた言葉で告げるのだった。
「決してね」
「ならば見せてやろう」
言いながら全ての死神が鎌を振りかざしてきた。
「この炎をな」
「何をしても無駄よ」
魔物はその自信そのものの声で四本の前足を死神のうちの一体に集中させてきた。
「もう貴方の本体はわかっているのだし」
「確かに私の本体はわかっているようだな」
死神もそれは見抜いていた。
「だが」
「だが?」
「それだけで私は倒せない」
こう告げるのだった。
「そして倒されるのは貴様だ」
言いながら鎌を一斉に振り下ろした。すると。
魔物はその四本の手で鎌を防ごうとした。燃え盛るその鎌をだ。炎を見ても動じるところはない。それで受け止めたがしかし。ここでその炎が動いた。
「なっ!?」
炎は忽ちのうちに魔物を包み込んでしまった。魔物の身体が紅蓮に覆われた。
「この炎は」
「ただの炎ではない」
死神はその炎に包まれた魔物に対して告げた。
「ただの炎だと信じ込んでいたようだがな」
「一体何を燃やしているというの?」
「貴様自身をだ」
こう告げる死神だった。
「貴様自身を今まさに燃やしているのだ」
「わからないことを言うわね」
だが魔物は彼のその言葉を聞いて笑うのだった。
「私は炎に包まれているけれど燃えてはいないわ」
「燃えてはか」
「そうよ。熱くとも何ともないわ」
実際に魔物は平気な様子であった。炎に包まれてはいてもそれでも苦しむ様子もなければもがくこともなかった。全く平気な様子だった。
「特にね。これでどうして私が燃えているというのかしら」
「燃やすのは何も身体だけではない」
だが彼は言うのだった。
「身体だけではな」
「というと」
「見るのだ」
紅蓮の炎がさらに沸き立ってきた。
「この燃え盛る炎を」
「炎が燃えた!?」
「そうだ。今この炎が燃やしているのは貴様の魂だ」
それだというのである。
「貴様の魂そのものを燃やしているのだ」
「くっ、そ
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