第二十一話 人狼その十五
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「行くぞ」
「ええ。こちらもね」
互いに見やっての言葉になっていた。
「行くわ」
「勝負だな」
髑髏と蝿が一斉に動きだした。そのうえで互いに激突し合う。
髑髏達はその威力で蝿達を押し潰そうとする。それに対して蝿達はその数で押し切ろうとする。互いに潰し合い無惨に溶け合い砕け合う中で死神も蝿もそれぞれ前に出た。
死神の鎌が右斜め上から一閃される。だが魔物はそれを翼で受け止めたのだった。
「むっ!?」
「いい一撃ね」
魔物はそれは認めた。
「けれど。私には通じないわよ」
「鎌が通じないというのか」
「その攻撃ではね」
そうだというのである。
「残念だったわね。さあ」
「むっ!?」
「今度は私の番よ」
言いながら右の足を二本出してきた。それで死神の胸を貫こうとする。
だが死神はすぐに姿を消してそれを避けた。そのうえで魔物の右に出てそのうえで再び鎌を一閃させる。しかしこの攻撃もだった。
素早く元に戻してきたその右の二本の足で止められてしまった。魔物の足はどれも昆虫のその堅い殻に覆われているのだった。
だからこそ鎌は通じない。死神は今それを察した。
「鎧か」
「そうよ」
やはりそれだというのだ。
「私の足は鎧そのものよ」
「そうだな。どうやら足には鎌は通じないか」
「これで貴方の攻撃を防いでみせるわ」
彼に向かい直ったうえでまた告げるのだった。
「全てね。そしてそのうえで貴方を貫いてあげるわ」
「そうして私を倒すか」
「さあ。どうするのかしら」
声が楽しむものになっていた。
「私に鎌は通じないけれど」
「生憎だが弱点のない者なぞいない」
先日牧村に言われた言葉をここで思い出していた。
「そんな者はな」
「私だけは例外ね」
だが魔物は死神のその言葉を一笑に伏すのだった。
「この私はね」
「残念だがそれは違う」
死神は魔物のその言葉を打ち消してしまった。
「貴様もまた同じだ」
「じゃあそれを見せてもらうわね」
魔物は死神の声に対して笑ってみせた。
「それを」
「ならばだ」
再び大鎌を握る死神だった。
「見せてやろう」
ここで出してきたのは分身であった。今回もこれを使ってきたのだ。
そのうえで魔物に対して一斉に切り掛かる。しかしであった。
「むっ!?」
「残念だけれどそれも通じないわ」
また言ってきたのだった。
「それもね」
「!?そういうことか」
攻撃を受け止められてもそこからすぐに察した死神だった。
「見えているかのか」
「そうよ」
その前の四本の足で攻撃を止めてみせたまま答える死神だった。
「見えているのよ。私はね」
「目が二つだけではない」
死神はこのことも見抜いていたのだった。
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