第二十一話 人狼その十二
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「何故ならだ」
「身体が腐ることはないというのね」
「貴様が何かを仕掛ける前に貴様を倒す」
だからだというのである。
「だからだ。私は腐らないのだ」
「そうなの。それじゃあその言葉を偽りにしてあげるわ」
魔物はその無数の複眼に笑みを浮かべてみせていた。その笑みは酷薄でしかも死を予見してそのうえで楽しむ、そんな笑みであった。
「私自身でね」
「では行くぞ」
死神はその右手をゆっくりと動かしてまた述べた。
「闘いをはじめる」
「いいわ。じゃあ来て」
魔物も今は動こうとしなかった。彼のその動きを見るだけだった。
死神は右手を拳にしてそのうえで自身の胸の前に置いた。するとそこから白い光を発しその中で己の姿を変えたのであった。
その中から出て来たのは戦う姿の死神だった。あの白いフードの服を身にまとい大鎌を持っている。その姿で現われたのだった。
大鎌を両手で持ち一閃させる。そのうえで魔物に対してまた告げた。
「私の方はこれでいい」
「私はもう何時でもいいわよ」
ナスは悠然とした声で彼に返した。
「それじゃあ。はじめましょう」
「望むところだ」
こうして彼等の闘いがはじまった。そして牧村もまた。モズマという異形の魔物と対峙していた。
「では髑髏天使殿」
魔物は彼に対しても恭しい態度を見せていた。
「はじめましょうか」
「礼儀正しいのだな」
牧村はその魔物の物腰を見て述べてみせた。
「魔物だというのに」
「魔物や人間といったことは関係ないのです」
しかし魔物は笑みで彼に返した。声は気品のあるものだったが皮膚のない顔からそれは到底気品のあるものには見えなかった。少なくとも表情としては。
「それにつきましては」
「関係ないのか」
「私は誰であろうと態度を変えません」
そしてこうも言うのだった。
「常にです」
「誰であろうとか」
「それが私のポリシーです」
次に言った言葉はこれだった。
「ですから私は貴方ともこうして」
「わかった。それではだ」
「はい」
「闘うとしよう」
魔物のその考えをしかと聞いてから今の言葉を出した牧村だった。
「いいな」
「では変身して下さい」
モズマもまた今は仕掛けようとはしなかった。闘う姿ではない彼に対しては。
「それからです。全ては」
「ではな」
両手を拳にして胸の前で打ち合わせる。すると黄金色の光が拳と拳の間から起こり彼の全身を包んだ。それが消えた時に彼は髑髏天使になっていた。
右手を少し前に出し開いてから握り締める。そのうえで言うのだった。
「行くぞ」
「わかりました」
魔物は彼の言葉に頷く。こうして彼等の闘いもはじまった。髑髏天使はすぐにその背に翼を出し両手に剣を持った。そのうえでまずは青くなるのだ
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