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SAO─戦士達の物語
SAO編
九話 歩み始めた二人
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様な、嫌な笑い方をする。
この言い回しから察するに、シリカが追いつめられるのは分かっていたのではあるまいか……

「でも今更帰ってきても遅いわよ。ついさっきアイテムの分配は終わっちゃったから」
「要らないって言ったはずです!──急ぐので」
シリカは早くこの女から離れたいのだろう。俺の事を引っ張って宿に入ろうとするが……

「あら?あのトカゲ、どうしちゃったのかしら?」
「……っ」
 トカゲとはピナの事だろう。
使い魔はゲームの使用上、主人の傍から離れることは無いから、その姿が見えない以上理由は一つしかない。
ロザリアの瞳に宿っているのは明らかな悪意。それにこいつ、楽しんでやがるな……

「あらら?あぁ!もしかしてぇ……?」
 先ほどよりも更に嫌な笑いを口元に浮かべながらロザリアは畳みかけようとする。
しかし、何か言われる前に今度はシリカの方から口を開いた。

「死にました……。でも!」
 シリカの目が鋭くなり、ロザリアを睨みつける。

「ピナは、絶対に生き返らせます!」
「ヒュウ」
断言したシリカにロザリアは少し驚いたように目を見開き、小さく口笛を吹く。そして俺は、小さく笑っていた。
正直、この子が精神的に大丈夫か不安だったが、これなら大丈夫だ。それに、本人が成功を疑っているようでは、上手く行くものも行かなくなるだろうからな。

「へぇ、てことは《思い出の丘》に行く気なのね。でも、あんたのレベルで攻略できるかしらね?」
 その質問で言葉に詰まるシリカ。
っと、俺の出番かな。

「まぁ、一応此処に手伝い役がいるんで。」
頭を掻きつつ、シリカの前に出ながらそう言う。

「それに、あそこ大したダンジョンじゃないし。」
見ると、ロザリアは俺の事を値踏みするように見ている。そして結論を出したらしいロザリアは、鼻で笑った。
あー、こりゃ見くびられたな、俺。

「あんたもその子にたらしこまれた口?それとも騎士(ナイト)気取りのお調子者かしら?まぁ、見たとこ騎士って程強そうには見えないけど」
「俺の評価についてはご自由に。どれ、行こうか。」
またしても泣きそうになっているシリカを促し、俺は宿歩き出した。
うつむいていてよく見えないが、今のシリカは屈辱で顔をゆがませているのだろう。

「ま、せいぜい頑張ってね」
 馬鹿にしたように言うロザリアに、シリカは振り向きもしなかったが。
俺は最後の言葉を発する瞬間、ロザリアの瞳に少しの歓喜と、強い欲望が宿ったのを、見逃さなかった。

シリカには少しだけ怖い思いをさせるかもしれないが、これは思いの外一石二鳥になりうるかもな……

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