第二十一話 人狼その十
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「その鋭い気配でな。手に取るようにわかる」
「そうか。その力は健在なようだな」
「いや、健在ではない」
今のロッカーの言葉は否定してみせたのであった。
「健在ではな」
「ではどうなのだ?」
「強くなっているのだ」
今度は口元だけでなく目元でも笑う死神だった。自信に満ちた笑みであった。
「私はな。以前より、貴様と最後に出会った時よりもな」
「そうか。では見せてもらおう」
ロッカーは死神に顔だけでなく身体も向けていた。彼と正対しながら話しているのだった。
そうしてそのうえで。死神に対してこう言ってきたのであった。
「貴様の今の力をな」
「よかろう」
死神はまだ戦う姿になってはいない。しかし既に刃は持っていた。まさにその顔だった。
二人の激突がはじまろうとしていた。だがここで。青年がロッカーの後ろから言うのであった。
「待て」
「むっ!?」
「貴様はここに髑髏天使に対して己の魔物を向かわせるつもりで来たのだったな」
「そうだが」
「では貴様の相手は髑髏天使だ」
こう彼に告げるのだった。
「貴様のはな」
「それじゃああれだな」
ロッカーは青年にそう告げられても悪い顔はしなかった。むしろさらに楽しそうな顔になってそのうえで笑いながら彼に対して言葉を返すのだった。
「御前が死神の相手をするんだな」
「そうだ」
青年も彼の問いに答える。
「俺の連れて来た魔物が死神の相手をする」
「わかったぜ」
ロッカーは笑いながら彼の言葉に頷いてみせた。そうしてそのうえであらためて牧村の前に来て彼に対して言うのであった。
「この時代の髑髏天使」
「何だ」
牧村もあらためて彼に応えた。
「貴様の魔物が今回の俺の相手になったのか」
「そういうことだな。それでいいな」
「俺は相手は選ばない」
牧村はもう手すりにもたれかかってはいなかった。今は立ってそのうえで応えてきていた。
「どの魔物が来ようとだ」
「倒すっていうのか。いいねえ」
ロッカーは彼の言葉を受けてさらに笑ってみせてきた。そしてまた言ってきた。
「それならこっちもやり易いってことだ」
「来るな」
「ああ、それじゃあ」
サングラスを外しその目を見せる。すると彼の影から肌のない人を思わせる異形の存在が姿を現わしてきたのであった。その不気味な姿を見せながら。
「こいつはモズマっていってな」
「モズマか」
「そうさ。イギリスにいる奴だ」
それだというのである。
「それを連れて来たってわけだ」
「イギリスのか」
「それでいいよな」
あらためて牧村に問うのだった。
「いいって今言ったしな」
「構わない。それではだ」
「では人狼様」
そのモズマという名前の魔物はロッカーの横に来て彼に対して恭しく一礼
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