第二十一話 人狼その一
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髑髏天使
第二十一話 人狼
「やっと来てくれましたね」
「待たせてくれたわね」
空港であった。あの老人と女がまずこう告げていた。見れば彼等は全員集まりそのうえで今空港に来たその者を出迎えようとしているのだった。
「何時来るかと思っていましたが」
「やって来たな」
老人の言葉に男が応えた。
「ようやくな」
「そうだね。やっとだよね」
子供もまた言うのであった。
「待たせてくれたよ。イギリスってそんなに遠いの?」
「かつては遠かった」
青年が子供に応える。空港は清潔な床とガラス張りの壁で全てが透き通って見える。その透き通った中で彼等は行き交う人々を他所にその誰かを待っているのであった。
「かつてはな」
「ああ、今は凄く便利になったからね」
子供は今の青年の言葉に応えたのだった。
「この港だってあるし」
「空港というのだ」
紳士が子供に述べた。
「ここはな」
「ふうん、空港ねえ」
「飛行機というものについては御存知ですね」
今度は老人が彼に言ってきた。
「それは」
「うん、わかるよ」
このことには何の問題もないといった態度で答える子供だった。
「あれだよね。今空を飛んでいる鉄の乗り物だよね」
「はい、それです」
老人はまた答えた。見れば空港の周りを飛行機達が離着陸している。それを見ながらにしての会話なのであった。
「あれが飛行機なのです」
「僕は船でここまで来たからね」
子供は少し感慨ありげな声で述べた。
「けれど船もね。変わったね」
「そうだな」
紳士が子供のその言葉に頷いた。
「人の世界はかなり変わった」
「私達が封印されていなかった時代はここまで騒がしくなかったわね」
女はそれが少し残念なようであった。
「何から何まで。この時代は騒がし過ぎるわ」
「人間達も変わったか」
男は人間について述べた。
「かつてよりも。忙しく動くな」
「何もかもが変わったようですね」
老人もまた言うのだった。
「人の世界は」
「別に変わらなくてもいいものだが」
青年はその変化自体を好んでいなかった。
「あの時代のままでよかったのだがな」
「だが人間達はそうは思っていないらしい」
紳士は人間の側に立った言葉を述べた。
「どうやらな」
「今の人間は騒がしいのが好きなんだ」
子供は紳士の言葉を聞いてこう考えるのだった。
「何か妙なことだね」
「私達から見ればそうですが彼等にしては違うのでしょう」
老人もまた人間の側に立って考えてみた。
「もっとも。魔物にとっては大した意味はありませんが」
「そうね。私達は私達だから」
女はそう考えることにしたのだった。
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