第二十話 人怪その二十一
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「これからは私の番だ」
「あら、それで私を倒すというのかしら」
「その通りだ」
死神の声は既に魔物に狙いを定めている声であった。
「今からな」
「じゃあ見せてもらうわ」
魔物もまた死神のその声に応えるのだった。
「今からね」
「行くぞ」
また死神の声がした。
「今からな」
「それでどう来るのかしら」
魔物は死神の姿が見えなくとも悠然とした声を出すのだった。
「私はここにいるけれど」
「そして葉に護られているか」
「そうよ」
そしてこうも言うのだった。
「その通りよ。この葉に近寄ればそれだけで傷付くわ」
「確かにな」
これまで傷を受けてきたからこそわかることだった。死神の身体も服も既にかなり切り刻まれている。影の中に消えたのもそれから逃れる為ということもあるのだ。
「そして私が何処にいるのかもわかるということか」
「この葉は相手を切るだけではなくその場所も知らせてくれる」
魔物はまた言った。
「そうして私を護ってくれているのよ」
「そういうことか。しかしだ」
「しかし?」
「完璧なものなぞ有り得ない」
死神は言うのだった。
「私にしろそうだ」
「では私のこの葉もまたそうだというのね」
「その通りだ。見るのだ」
「んっ!?」
今の言葉と共にだった。不意に礼拝堂が背後から光を受けて影になっている部分、丁度主が十字架にかけられそこが影になっている部分から出て来たものがあった。見ればそれは影だった。死神の姿をしたその影だった。
「貴方の影ね」
「そうだ。私の影だ」
死神の声がここでもした。
「私のだ。影だ」
「また面白い術ね」
シャールカはそれを見ても悠然とした態度を崩さない。
「それで私の相手をしてくれるのね」
「見るのだ」
また死神の声が言った。
「影に刃は通じない」
「通じない?」
「そうだ。見るといい」
影は一歩一歩確実に魔物に対して近付く。葉はその影を素通りするだけだった。切り刻むこともまとわりつくこともなかった。何もできはしなかったのだった。
「私の葉が」
「言った筈だ。影に刃は通じない」
またこのことを魔物に対して告げる死神の声だった。
「斬ることは決してできないのだ」
「そうだというのね」
「そうだ。そして」
しかもであった。ここで影は動いた。右手を高く掲げそこから複数の光を出してみせた。淡い、まるで月の輝きのような光であった。
「光を出してどうするつもりなの?」
「光を幾つも浴びた影は」
死神の声はまた魔物に告げた。
「一つだけではなくなるものだ」
「一つだけでは」
「そうだ。見るのだ」
また見ろと言う。すると。
その複数の光を浴びた死神の影は幾重にもなっていた。それぞれの方向にそれぞれの影が
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