SAO編
八話 青年の苦手な物
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
目の前で、少女が泣いている。
嗚咽を漏らし、目からあふれ出す涙を自分の意思では止めることも出来ずに流れるがままにして、泣いている。
正直言って、嫌な気分になる。
それは、苛立ちや、怒りなんかの激しい感情では無い。
嫌悪や、疑念なんかの黒っぽい感情でも無い。
ただ、嫌なのだ。
目の前で女性が涙を流すと、それが誰であれ何故であれ、たまらなく心がモヤモヤして気持ちが悪い。(嘘泣きは見分けがつくが)
しかも、こんな状況からは普段の俺なら即刻立ち去る所なのに、そんな事が出来る流れでも無い位置に今の俺は居るわけで。
仕方が無い……か
「その、悪かった、間に合わなくて……」
何とか話してみないと、この子が泣き止むことは無さそうなのでとりあえず謝る。
多分俺がもうちょっと敏捷度を上げていれば、この涙は防げただろう。
或いは投擲スキルをうまく使っていれば。
或いは初めの一瞬の躊躇が無ければ。
いずれにせよ、もしかしたら防げたかもしれないこの状況に罪悪感を感じた俺は、自然と謝罪の言葉を口にしていた。
「……いえ……あたしの……あたしのせいですから……。助けてくれて……ありが、とう、ござ……」
と言われても、必死に泣くのを堪えてる顔ではむしろこっちが苦しくなるばかりだ。
ああああ!駄目だ!どんどんモヤモヤが増してきた!
とりあえず何か逃げ道は無いかと考える……ふと、彼女の足元に落ちている水色の羽が気になった。
俺は少女の前に跪いて、正面から目を合わせられるようにする。
「なぁ、その羽……アイテムだったりするか?」
普通に考えればあの小さな竜の遺品なんだろうが、この世界に置いてそんな気のきいたシステムは無い。
死ぬ時はきれいさっぱり砕け散って消滅するのがこの世界だ。逆にいえば、何か残して逝ったという事は意味があるかもしれない訳で。
戸惑ったように少女が顔を上げる。
髪は薄い亜麻色で、左右を赤い玉のような装飾が成された髪飾りで結んでいる。
顔立ちは整っているが、やはりというか……幼く、多分12〜4歳だろう。
改めて正面から見ると可愛らしい顔をしている。中層プレイヤーたちのアイドルにもなるわけだ。
アイテムの名称などを見るには、シングルクリックの要領でそのアイテムに触れるのが最も手っ取り早い。
ゆっくりと、恐る恐るといった様子で少女の指が羽に触れ、半透明のウィンドウにアイテム名と、何故か重量が表示される。
[ピナの心]
[0、2g]
軽いな、ピナの心。
いや、そういう状況で無い事は分かっているが何と無く思ってしまったんだ。うん。
と言うかこの子また泣きそうになってるし!ああっ!くそっ!
「待った待った!なんか思いだしそうなんだ、頼むから泣かんで
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ