第二十話 人怪その十九
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燃え盛るその剣を上から下に振り下ろし紅蓮の炎を魔物に放った。炎はそのまま刀身の形で魔物に向かう。しかし魔物はそれをよけようともしない。
「かわさないのか」
「見るのだ」
悠然とした声をここでも出すのだった。
「今から起こることをな」
「そういうことか」
髑髏天使は彼のその自信に満ちた声から結末を察した。
「炎もまた、か」
「流石だな。察したか」
「自信には裏付けがあるものだ」
髑髏天使は自信は何に基くものかわかっていた。わかっていたからこそ今の言葉を出したのだ。だがそれでも冷静さは健在だった。
「時として根拠もなくそれを持っている愚か者もいるが」
「生憎だが私は愚か者ではない」
魔物はそれはそうではないと述べてみせた。
「それは言っておく」
「そうだな。確かに貴様は愚かではない」
髑髏天使もまたそれは承知していた。やはり冷静に言葉を返す。
「それではだ」
「そうだ。見るのだ」
炎は今まさに魔物を貫かんとしていた。そして今それが魔物を撃った。
しかしであった。魔物は炎の中で平然としていた。まるで何でもないように。
「やはりな」
髑髏天使はそれを見て一言出した。
「炎は通じないか」
「先程も見せたが私の身体の回復力は尋常なものではない」
魔物の声がここでも誇らしげなものになっていた。
「だからだ。炎もだ」
「効果がないのか」
「斬ろうも焼こうともだ」
これまで髑髏天使が彼に繰り出した攻撃をどちらも告げてみせたのだった。
「私には効かない。私は倒れることがないのだ」
「倒れることがか」
「そう。つまりだ」
倒れることがないということを前提にしてさらに髑髏天使に告げてきた。
「最後に勝つのは私なのだ」
「それはかなり強引な解答の導き方だと思うがな」
髑髏天使は既に勝ち誇ったものさえ見せている魔物にあえて感情を見せずに返した。もっとも今の彼は実際にこれといって感情を持ってはいなかったが。
「勝つのは貴様か」
「私は倒れない」
またこの前提を出してみせる魔物だった。
「それならばそうなるのは当然のことだ」
「生憎だが俺の持っている力は炎と風だけではない」
髑髏天使はその既に勝利を確信している魔物に対してまた告げた。
「そして剣だけでもない」
「氷か」
「そうだ。そして水」
それもだというのだった。
「力天使の力もある」
「ならばそれも見せてみるのだ」
魔物は氷に対しても同じ様な自信を見せてきた。
「その力をな」
「いいだろう」
髑髏天使は魔物のその言葉に応えた。そうしてすぐにその身体を青いものに変化させた。これこそまさしく力天使の色であった。
「これでいいな」
「ふむ」
魔物は力天使になってみせた髑髏天使を見て声を出した
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