第二十話 人怪その十七
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「しかしだ」
「しかし?」
「それをそのまま聞くとは限らない」
だがこうも言うのだった。
「これだけは言っておく」
「面白いことを言うわね」
シャールカはそれを聞いて動揺を見せることなく平然と返すだけだった。
「それはまた」
「面白いことを言ったつもりもない」
死神はここでも態度を変えはしなかった。その手に持っている大鎌を構えただけだった。
「そしてこれ以上何かを話すつもりもない」
「そう。それじゃあ」
「行くぞ」
その鎌を構えたまま流れるように前に出た。そうしてそのうえで魔物を斬りつけてきた。
鎌を右斜め上から左斜め下に一閃させる。白銀の光が見えた。
だがその白銀の光は何も斬らなかった。あえて言えば空を斬っただけであった。
「かわしたか」
「流石ね」
シャールカの声がその鎌の後ろから聞こえてきた。今二人は礼拝堂の前で対峙していた。
「死神だけはあるわ。見事な鎌の動きね」
「だがかわしたな」
死神はそれを言うのだった。
「私の鎌を」
「いい動きだけれどそれで私を斬ることはできないわ」
自信に満ちた声だった。
「残念だけれどね」
「少なくとも今の鎌はかわしたか」
「そしてこれからの鎌もね」
それもだというのだった。その自信に満ちた声で。
「私を斬ることはできないわよ」
「確かに今のではそうだ」
死神は己の言葉をあえて限定してみせているようだった。
「だが。これならばどうだ」
「んっ!?」
死神の身体が分かれた。一人が二人、二人が三人、三人が四人へと。右から左にそのまま影の様に増えていったのであった。
気付けば五人になっていた。その五人それぞれの死神が。鎌を手に魔物を見据えていた。
「一人で無理ならば五人だ」
「そう、分身ね」
「知っていると思うがただの分身ではない」
こうも言う死神だった。言いながらそのそれぞれから強い殺気を出していた。それはまるで氷の様な、冷たくそれでいて澄んだ殺気であった。
その殺気を放ちながら五人の死神は。間合いをゆっくりと狭めてきた。そして。
五人一度に斬りつける。しかし魔物はそれもかわしてしまった。今度は上に跳んだのであった。
「惜しかったわね」
「これもかわしたのか」
「分身での攻撃もまた」
「そうよ」
白い天井に手をやりそれで止まっていた。そうしてそのうえで言うのだった。
「その通りよ。私の動きを甘く見ないことね」
「そのようだな」
死神は魔物の言葉を聞きそれをそのまま受け入れた。
「分身も効かないか」
「少なくとも斬られはしないわ」
シャールカは言いながら降り立ってきた。降りるその時に前方に数回転する。そうしてそのうえで着地して立ち上がってみせた。
「貴方の鎌がどれだけ凄かろうがね」
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