第二十話 人怪その十六
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「本来の姿をな」
「よかろう。それではだ」
「無論俺も見せよう」
相手が見せるならば、ということだった。牧村も応えるというのだ。
「俺のもう一つの姿を」
「髑髏天使の姿を」
「それでいいな」
あらためて神父に対して問う。
「そのうえで闘う」
「いいだろう。それではだ」
神父が先だった。その姿が次第に変わってきた。
まず肌の色が変わる。皮膚がそのまま肉になったかのようなグロテスクなものにだ。それと共に身体全体が崩れさながらアメーバのようになる。口が尖り何か一本の触手の様なものに変貌した。目も何時の間にか一つ目になっており完全に異形の存在となっていた。
「これが私の本来の姿だ」
「まだらミイラだったか」
「そうだ」
牧村の今度の問いにも答えてみせてきた。
「これが私、まだらミイラだ」
「そうか。わかった」
「それではだ」
己の姿を見せたうえで、であった。あらためて牧村に対して声をかけてきた。
「髑髏天使よ。次は貴様の番だ」
「わかっている」
それは既に、ということだった。
牧村はその両手を拳にして胸の前で打ち合わせた。するとそこから白い光が起こり彼の全身を包み込んだ。その中で彼は異形の天使へとその姿を変えたのだった。
「行くぞ」
右手を少し前に出し一旦握り締める。それと共にすぐに背中から翼を出し身体の色も変えてみせてきた。
「力天使か」
「その通りだ」
その力天使の姿でまだらミイラの言葉に応える。
「では行くぞ」
「うむ。ではこちらもだ」
まだらミイラは動かないまま彼の言葉に返した。
「闘わせてもらうとしよう」
「貴様の腕、見せてもらう」
髑髏天使は既にその両手に剣を持っていた。そのうえで背中の翼を羽ばたかせる。
そしてそれからまだらミイラに向かった。彼等の闘いが今はじまった。
その時死神とシャールカの闘いも幕を開けていた。死神もまた既に闘いの時の姿になっておりシャールカもまた本来の姿になっていた。それは半裸の長い緑の髪の女であった。
「それが貴様の本来の姿か」
「私は森に潜む魔物」
血塗られた声で死神に返していた。
「その力を見せてあげるわ」
「戯言を。見せるのは私だ」
死神はその両手の鎌を構えながら魔物に対して述べた。
「この鎌の力をな」
「命を刈り取るその鎌の力をね」
「そうだ。見せてやろう」
こう魔物に告げるのだった。
「貴様の最後にな」
「面白いことを言うわね」
シャールカは死神のその言葉を聞いても悠然としていた。そうしてその血塗られた声で妖しい笑みまで含ませてきたのであった。
「貴方も。面白いわ」
「生憎だが私は冗談は言わない主義だ」
死神はそんな彼女の言葉をここでは受け流してみせた。
「真実のみを言う」
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