第二十話 人怪その十五
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「では入ろう」
「宴のはじまりだ」
紳士の言葉が笑った。
「血の宴のな」
教会の中に入る。入るとまずは聖堂があった。そこは高い天井を持つ奥行きのある部屋であり中央が道になっており左右に席が連なっている。
壁には円柱が連なっておりその一つ一つに聖人達の像がある。奥の礼拝堂は十字架のキリストがある黄金の世界であり上が円形になっている窓からは白い光が差し込んでいる。
天井は白くアーチ状になっている。二人はその聖堂の中に入ったのだった。
「見事なものだな」
「全くだ」
牧村はまずは死神のその言葉に対して頷いた。
「俺はキリスト教にはこれといって興味はないがな」
「それでもよさはわかるのだな」
「ワイングラスを使わなくともその美しさはわかる」
こう表現してみせたのだった。
「違うか?それは」
「その通りだ。私もまたこの美しさはわかる」
死神はその聖堂の中を目で見回しながら牧村に答えた。
「美は普遍のものだからな」
「そしてこの美しい世界の中での宴か」
「気に入ってもらえたか」
二人の前にいる紳士は声を笑わさせてこう二人に問うてきた。
「この舞台は」
「大いにな。それではだ」
牧村は今度は単刀直入だった。
「相手は何処だ」
「今目の前にいる」
紳士はこう牧村に返した。
「ここにな」
「ほう」
牧村は彼のその言葉を聞いてまず前を見た。
するとそこには。二人の神父が立っていた。
一人は頭が禿げた年配の男、もう一人は女だった。即ちシスターであった。若く妖艶な顔立ちのいささかシスターとは思えぬ女であった。
「この二人か」
「私はまだらミイラという」
「私はシャールカ」
彼等はそれぞれ名乗ってきた。
「髑髏天使、それに死神よ」
「貴様等が最後に覚える名前だ」
こうも二人に言うのだった。
「それでは。はじめるとしよう」
「バンパイア様の宴を」
「いいだろう」
「よかろう」
牧村も死神も彼等のその言葉に応えた。
「俺としてもそのつもりでここに来た」
「私もだ。では私の相手はだ」
「私よ」
シャールカが死神に対して名乗りをあげた。
「貴方は私が相手をしてあげるわ」
「そうか。ではもう一人はだ」
「髑髏天使の相手は私だ」
自らをまだらミイラと名乗った神父はこう応えるのだった。
「私が務めさせてもらう」
「貴様がか」
「不服か?」
牧村の声に応えて問い返してきた。
「私が相手では」
「いや」
だが牧村はそうではないと返した。ここでは既に髑髏天使の声になっていた。
「俺は相手が誰であろうとだ」
「闘うというのだな」
「目の前にいるその相手が俺と闘うことを望むならばだ」
その場合は、というのだ。
「俺は闘う。その相手とだ」
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