第二十話 人怪その十三
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そして彼等を見据えながら。言葉を続けていく紳士であった。落ち着いて気品があるがそれでいて何処か血の匂いを漂わせる声で。
「その然るべき場所では」
「一つ言っておく」
死神が案内しようとする紳士に告げてきた。
「私は酒は好きだ」
「そうか」
「とりわけ仕事の後の酒がな」
こう言うのである。
「好きだ。それは言っておこう」
「覚えておくことにする」
「有り難い。では飲ませてもらおう」
「髑髏天使の方は駄目だったな」
「何があろうとも飲むことはできない」
牧村は己のことでも引こうとはしなかった。
「何度も言わせてもらおう」
「よくわかった」
紳士もその彼の言葉にまた応えてみせた。実に落ち着いた態度で。
「では。その場所はだ」
「何処だ?」
死神がその紳士に対して問う。
「何処だ?そこは」
「来るといい」
答えずに案内をするのだった。
「今から案内をさせてもらおう」
「わかった。それではな」
「共に行かせてもらおう」
こうして二人は紳士に案内されてある場所にやって来た。見ればそこは。教会の前だった。ゴシック建築の巨大な、さながらケルン大聖堂を思わせる尖った屋根や塔のある教会の前に案内されたのであった。
その教会を見てまず紳士に対して問うたのは牧村であった。
「教会だな」
「その通りだが」
前に進んで案内をしていた紳士はここで自身の後ろにいる牧村に対して顔を向けて答えた。
「それがどうかしたか」
「貴様はバンパイアだったな」
牧村は今度は紳士のその正体を話に出してみせた。
「それで教会か」
「バンパイアは教会を恐れる」
紳士もまた彼が何を言いたいのかはわかっていた。それでこう返すのだった。
「そのことか」
「貴様は違うようだな」
「なら答えよう」
紳士は今度はこう牧村に対して言った。
「今私は太陽の下に歩いているな」
「ああ」
「そして十字架を見ても何も起こらない」
実際にその教会の上に掲げられてある十字架を見てみせる。しかしそれでも彼は全くどういうものも見せず平然としたものであった。
「私にはな」
「バンパイアには本当は教会の力は通じないのか」
「普通のバンパイアには通じる」
紳士はこう答えた。
「普通の、バンパイアにはな」
「貴様は普通ではないのだな」
「私は神だ」
だからだというのである。
「その私にこの程度のものが効く筈がない」
「そういうことか」
「話はわかったな。それではこれでいいな」
「ああ。納得させてもらった」
牧村もこう答えて頷いてみせた。
「それではだ。話はこれで終わらせてだ」
「戦うのだな」
「この教会の前か」
死神が紳士に問う。
「ここで戦うつもりか」
「いや、外ではない」
死
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