第二十話 人怪その五
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「それでもよ。何があるかわからないわよね、世の中って」
「ではこうしよう」
少しは反省したマスターは言葉の調子も穏やかなものにさせて述べた。
「二人の大学卒業まで待つ」
「待つのね」
「それから決めよう」
とりあえずそれまでは保留、ということであった。
「それからな。それでいいな」
「俺はそれで構わない」
牧村はここでも落ち着いた声であった。
「それでな」
「よし、これで決まりだ」
マスターは牧村の言葉を受けて頷いた。
「今はだ。二人で楽しくやってくれ」
「ずっと楽しくやらせてはもらうけれど」
若奈はさりげなく自分の考えを口にした。
「それでも。何でもかんでも自分勝手に強引に決めないでしょ」
「いや、申し訳ない」
照れ臭そうに笑っての言葉であった。
「今回はな。済まないことをした」
「わかればいいのよ。じゃあ牧村君」
「ああ」
若奈は父の強引な話が一段落したところで牧村に顔を向けて話を消してしまうことを狙った。そして牧村もそれに応えるのであった。彼等もまた話をしていくのであった。
「コーヒーお替りいる?」
「そうだな」
牧村もそれに応えて言葉を出す。
「もう一杯貰えるか」
「もう一杯ね」
「同じものをな」
そしてこうも言い加えるのだった。
「欲しい。それでいいか」
「いいわよ」
そのマスターが言うところの一億ドルの微笑で応える。
「それじゃあもう一杯ね」
「頼む」
「コーヒーはどんどん飲んでくれよ」
マスターがその彼に笑って告げる。
「何しろ君はだね」
「お父さん」
しかしここで若奈の言葉の釘が刺さった。
「またそんなこと言って」
「おっと、これは済まない」
その若奈に言われて思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「では今日はこれで止めておくか」
「今日だけじゃなくていつもよ」
若奈の言葉はさらに厳しいものになっていた。
「いつも。わかったわね」
「何だ、随分厳しいな」
「親は甘やかしたら駄目だから」
殆ど保護者の言葉である。
「だからよ」
「何だそれは。折角今まで可愛く育ててきたのに」
「甘やかしてきたというのか」
「その通りだよ。子供は甘やかしていいんだよ」
今度は牧村に対して述べたマスターであった。
「思う存分な」
「こういう考えだから困るのよ」
しかし当の甘やかされた子供からはこうクレームが来た。
「子供の頃からね。こんなのだから」
「子供には甘いのか」
「子供じゃなくてバイトの人達にも甘いのよ」
若奈は困ったように話すのだった。
「優し過ぎるってお母さんにも言われてるのよ」
「しかし母さんも優しいぞ」
「限度があるでしょ」
少なくとも若奈の方がずっとしっかりしているのはわかるやり取
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