第二十話 人怪その二
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「コレクションにしている」
「相変わらずヘルメット集めるの好きなのね」
このことは彼女も知っていた。彼女は兄の趣味の一つにそうしたヘルメットを集めることもあるのだと思っているのである。
「それがかなり」
「嫌いではない」
牧村もそれは隠さない。
「いざという時に自分を守ってくれるのだからな」
「だから好きなの?」
「そこから愛着が出て来た」
だからだというのである。自分の身体を守ってくれるものに対して愛着を感じるのもまた人間の感情の一つなのである。彼もまた然りであった。
そして彼もまたヘルメットを被っていた。彼のものは白地に青く流星が描かれていた。
「今では多ければ多いだけいい」
「そうなの。多ければね」
「だがそれは俺に合わせている」
サイズが、ということだった。
「御前には大きいか。かなり」
「ううん、別に」
ヘルメットのまま首を横に振ってそれは否定するのだった。
「そういうわけでもないわ」
「ならいいがな」
「それにしてもヘルメットね」
未久は自分のヘルメットを右手で触りながら考えるのだった。
「確かにこれを被っていると安心できるわね」
「若しこれがなければいざという時に命はない」
「そうね。頭だし」
人間の弱点がそこに集中していると言っても過言ではない。だからこそそこを守る為にヘルメットというものが発達したのである。
「やっぱり大事よね」
「俺のサイドカーにはヘルメットを被っている奴が乗ることができる」
牧村のこだわりでもあった。
「これもまた譲らない」
「わかったわ。それじゃあこっくりさんとヘルメットはね」
「忘れるな」
念を押す声であった。
「絶対にな」
「ええ、わかったわ」
未久も兄のその言葉に頷く。そうしてそのうえで家に帰るのだった。家に帰ると二人は母が用意した夕食を摂った。その日は穏やかな日常であった。
次の日の夕方は喫茶店だった。当然ながら若奈の家のその店だ。そこのカウンターに座りコーヒーとモンブランを口にしているのであった。
「どう?今日のスイーツは」
カウンターにいる若奈が彼に問うてきた。彼女は今白いエプロン姿でカウンターの中にいた。カウンターの中でガラスのコップを拭いている。
「モンブランだけれど」
その金色の糸と宝玉に飾られた菓子を見て牧村に問うのだった。
「美味しい?どう?」
「そうだな」
牧村はそのモンブランにフォークを入れ一片切り取った。そうしてそれを口の中に入れて味わってから彼女のその問いに答えるのだった。
「栗の味がよく生きているな」
「そう。よかった」
「適度な甘さで品もある」
そのモンブランの味をさらに楽しんでいた。
「いい感じだな」
「よかった。それ私が作ったのよ」
牧村の今の
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