SAO編
六話 依頼
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男だ。
こいつのギルドは、結構こんな状況でもゲームをじっくり楽しんでいる感じの雰囲気の中間層ギルドで、モットーは過剰ほど安全マージンを取った楽観プレイ。
少しだったが、この世界でも俺はこいつと付き合いがあった。
こいつが何故ここに?
俺の中にはその疑問が立ったが、そんなことは問うまでも無かったし、むしろ俺の持つこの疑問こそがおかしいのだ。
先程までの俺は、ちゃんとそれを冷静に分析していたじゃないか……。
こちらに気付いたらしいロレントは立ち上がり、呆けたような顔をしてこちらを見ている。
「リョウ……か?」
「ああ、俺だ」
「リョウ、リョオォォォォォ」
俺の名前を叫びながらロレントはその場に崩れ落ちる。
予想した事態が現実になった事を知りショックだったが、俺は勤めて平静を維持した声でロレントに尋ねる。
「何があったんだ?」
話によると、ロレント達は犯罪者≪オレンジ≫ギルドの襲撃に有ったらしい。
38層で狩りをしていたロレント達のもとに、数週間前新しくギルドに入りたいので体験させてほしいと言う女が現れた。メンバーは快く彼女を迎え入れ、数日間共にパーティーを組んで狩りを続けた。
だが、それが間違いだった。
これが終わったら正式にギルメンになるという約束を交わしてその日ロレント達は狩場に出た日。
最初は、些細な違和感だった。
なんとなく、その女に狩場のルートを誘導されている様な気がしたのだ。そしてその違和感が確信に変わった時には、もうすべてが遅かった。
いつの間にか袋小路に誘い込まれたロレント達の周りには、既に女の部下達が展開しており、逃げ場などどこにもなかった。
襲いかかって来る奴らを前に、ロレントは必死に結晶アイテムによる緊急脱出転移をするように叫んだが、転移中のわずかな時間に攻撃を受けると、転移が中断されると言う特性のせいで殆どの物は転移出来ず、結局逃げられたのはロレントだけ。
彼が転移する直前最後に見たのは、凶刃に貫かれる四人の仲間達の背中だったそうだ。
「…………」
「うっ、くぅ……ふぐぅぅ」
話し終わり、跪いて尚も泣き続けるロレントを見ながら、俺はおかしな感覚がするのを自覚した。
怒りの様な、哀しみの様な。
憐れみの様な、恐怖の様な。
そんな感情が、胸の中で複雑に混ざり合い、どれか一つが突出するわけでもなく、しかし逆に消えるわけでもなく。
自分の感情なのに、正確な判断が下せないでいた。
彼らと付き合いがあったのはそこまで長い期間では無い。当然、ロレントのように大仰な感情を持つ事も出来ないのだが、それでもその感情を無視することなど到底できそうになかった。
ただ、妙な冷静も頭の中にはしっかりと残っていて、思考もいつもどうりに働いている。
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