第十九話 人狼その十四
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「博士も苦労したんだね、やっぱり」
「そんなのと会って」
「百歳を超えれば色々あるものじゃが」
博士は腕を組んで回想にも入っていた。
「こんな経験できるのは滅多にないことじゃったな」
「だって僕達だってそこまで馬鹿な人間聞いたことないし」
「出鱈目なね」
その出鱈目さを聞いて妖怪達の誰もが呆れていることだった。世の中とはそうした意味でもかなり広いと言えた。いい意味では絶対にないが。
「妖怪達で驚くものだが」
「いや、牧村さんはね」
「あまり驚いていなかったよね」
「ねえ」
今の牧村の言葉には一斉に突っ込みを入れる妖怪達だった。
「僕達見ても何だって感じだったし」
「普通泡吹いて倒れるよね」
「それか血相変えて逃げ出すか」
こんな話をしていくのだった。
そして、であった。彼等はさらに話すのだった。
「けれど牧村さんそういうのなかったし」
「それが凄いんだけれど」
「そこまで驚くことでもなかった」
やはりその言葉は平然としている牧村だった。
「妖怪はな」
「けれどそこまでの馬鹿は見たことがなかったんだ」
「妖怪よりもなんだね」
「妖怪は害がない」
これもわかってきた牧村だったのである。やはりそういうこともわかってきたのだ。牧村の元々の性格である偏見のなさと妖怪達自身の無邪気さがそうした結論にさせたのだ。
「別にな」
「そうだよ。僕達平和主義者だし」
「楽しければいいからね」
「人を脅かすのは好きだけれど」
「脅かすだけか」
「それが妖怪の生きがい」
「だからだよ」
これはそれこそ昔から変わってはいない。やはり妖怪というものの仕事といえば人を驚かせることである。小泉八雲の小説にもある通りだ。
「それだけは止めないよ」
「絶対にね」
「その程度はな」
牧村もいいというのだった。
「もっともそれで人に逆襲されても知らないがな」
「何度もあったよ、そういうの」
「刀で切りつけられたり銃で撃たれたり」
「一番凄かったのはあれじゃったか?」
博士も笑いながら彼等に対して述べてきた。
「陸軍将校を驚かせた時か」
「いやあ、お侍を驚かせるより勇気がいったよね」
「あの人達真面目だし」
「しかも冗談が全然利かないからね」
まさにそれが陸軍将校であった。とにかく融通が利かない糞真面目さがあったのである。
「だからもう僕達にすぐ刀抜いて成敗しようとしたし」
「凄かったよね」
「命がけだったよね」
「そうそう」
「よく死ななかったな」
牧村はそれを聞いてまた述べた。
「そんなことがあって」
「あと一歩で、だったけれどね」
「かなり危なかったよ」
やはりそのわりには明るい声の彼等であった。
「けれど。だからこそスリルがあったよね」
「面白か
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