第十九話 人狼その十三
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「それではそうなるの当然だ」
「外部の人間に社内の秘密をばらすわ大事な商談を自分勝手に動いては破談にするわ処理に行くように言われても嘘をついて行かないわでのう」
「バイトでもそこまでやったら訴えられる」
牧村は今度は一言だった。
「よく訴えられなかったものだ」
「上司は『心を広く持ちましょうよ』と言われた時点で切れた」
「心を広くって」
「僕達でもそんなことやられてそんなこと言われたら間違いなく切れるよ」
「殺す」
赤鬼の言葉は本気だった。
「そうした奴にそうしたことを言われたらな」
「同感」
「絶対にそうするね、僕も」
「そこで仏とまで言われたその上司も切れて社長に言って懲戒免職となったのじゃよ」
ここで遂に、なのだった。
「会社がそ奴に受けた損失を全部実家に請求したうえでな。訴えられはせんかった」
「それで家に戻ってどうなった?」
「同じじゃよ。反省することもなかったからのう」
「やはりな」
牧村はそれを聞いて納得した顔で頷くのだった。
「それで一族にも見放されたか」
「禁治産者に認定されたわ」
つまり完全な社会的無能力者と認定されたのだ。
「後は知らん。どこぞにずっと幽閉みたいにされとるそうじゃがな」
「まあそうなるよね」
「だよねえ」
妖怪達も納得することだった。
「そこまで馬鹿だとね」
「どうしようもないよ」
「これがわしが今まで知ることになった奴の中で一番の愚か者じゃ」
博士はここでまた話した。
「どうじゃ。凄いじゃろ」
「凄いなんてものじゃないよ」
「三歳か四歳の子供じゃないよね」
「れっきとした成人じゃった」
それでもそうだったというのである。
「それでもな。そんな有様じゃった」
「どうしようもない奴は何処にもいるな」
牧村は静かに言い捨てた。
「とはいってもそこまでの愚か者はそうはいないだろうがな」
「他にも権力に反対するのならテロリストもいいとほざいておった愚か者もおったのう」
「それも酷いね」
「どんな馬鹿?本当に」
またしても呆れる妖怪達だった。
「っていうかそれって」
「だよねえ」
「そこまで馬鹿だって生きていけるのかな」
「だから破滅したじゃない」
「それもそうか」
妖怪達の間で出た答えはそれであった。
「無理か、やっぱり」
「最後は幽閉なんてね」
「それまでが実に酷いものじゃった」
博士ですらその顔を思いきり顰めさせていた。
「問題外にな」
「だよねえ。とてもね」
「有り得ないよね」
「まあそんな馬鹿は滅多におらん」
博士もまたあらためて言ってきた。
「はっきり言って二度と会いたくはない」
「まあ僕も会いたくないね」
「僕も」
「私もよ」
そしてそれは妖怪達も同じであるのだ
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