第十九話 人狼その十二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「若しかしてな」
「自覚しているところあるんだ」
「それじゃあ」
「昔から言われていた」
だからだというのである。
「時々な」
「皆そう思うんだね。やっぱり」
「そうみたいだね」
妖怪達の今の彼等の言葉を聞いてそれぞれ納得した顔で頷くのだった。
「結構頑固なところもあるし」
「何か物凄く自分の強い人だし」
「それも否定しない」
それもだというのだった。
「別にな」
「だと思ったよ」
「けれどさ」
そのうえでまた彼に対して告げた。
「全く聞く耳持たないってわけじゃないよね」
「中には自分は手駒じゃないとか動くのは自分だとか言う奴もいるけれど」
「少なくともそこまで愚劣なつもりはない」
牧村はこうも返したのだった。
「そこまで頑迷だと最早生きることも困難だ」
「そういう手合いもおったのう」
博士もそれを聞いてまた述べた。
「以前会ったわ」
「人間でか?」
「人間でじゃ」
牧村にすぐに返してきた。
「思慮分別が全くなく常識が皆無じゃった」
「また随分と厄介な奴だったんだな」
「そうしたことも言いおったわ」
しかもそれであったのである。
「破廉恥極まる行動を取って信用を完全になくしてそれに気付かんかったしのう」
「そんな馬鹿本当にいるんだね」
「凄いね」
長く生きている妖怪達ですら呆れるような話であった。
「ことの善悪も全くつかんで悪党とグルになっておった」
「また随分と愚劣な奴だったんだな」
「わしが今まで会った中で一番の愚か者じゃった」
博士ですらそう言う程であるのだった。
「法律やルールも全く理解できんかったしのう」
「凄い馬鹿だね、いや」
「何それ!?」
妖怪達がまた驚いていた。
「っていうか生きていけるの!?それで」
「しかも頑迷なんだよね」
「じゃから。人の言うことは全然聞かん」
やはりそれだというのである。
「それで暴走してとてつもない愚行を繰り返し責任も全く取らん」
「馬鹿どころじゃないよね」
「頭おかしいよな、絶対」
「実際の生活にもかなり重度の支障をきたしておったらしいからのう」
「当然だ」
牧村はそうなることも当然だと言い捨てた。
「そこまで酷ければ自然とそうなる」
「背信行為と呼ぶなら呼べ、この行動は仕方なかったとか必然性があったとかも言っておったな」
「いや、それ自己弁護じゃない」
「自分は可愛いんだ」
「自分だけじゃった」
博士は忌々しげな口調でも憎しみを思い出したものでもなかった。ただ淡々と事実を述べているだけだった。ただそれだけだったのである。
「何しろ自分勝手に動いて責任把握能力が皆無じゃったからな」
「それでそいつはどうなったのだ?」
牧村は最後にそのことを博士に問うた。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ