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髑髏天使
第十九話 人狼その十一
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「そのようにのう」
「そうか。それではやはり」
「君は力天使になった」
 あらためてそのことが確かめられたのだった。
「紛れもなくな」
「俺は力天使にもなったか」
「第五の階級じゃな」
 博士は階級についても彼に告げた。
「中級の第二階級でもある」
「中級のか」
「あと一つで中級も最上級になる」
「というとあれだな」
「主天使じゃ」
 それが中級三階級の最も上になるのである。
「中級はあとそれだけじゃ」
「最初は天使だったのにもうそこまでなったのか」
 牧村にしては珍しく言葉に郷愁のようなものが宿っていた。
「俺は」
「何か変わったところはないか?」
 博士は今度はこう牧村に尋ねてきた。
「それでじゃ。強さや能力の他にはじゃ」
「特に感じないな」
 自分で感じていることをそのまま述べた言葉だった。
「別にな。感じはしない」
「そうか。感じないか」
「俺は俺だ」
 そしてまた言った牧村だった。
「別におかしなところはないがな」
「だといいのじゃがな」 
 しかし博士はここで牧村の言葉を完全に肯定するのではなくいささか否定めいたものを漂わせた、そんなふうな言葉を出したのであった。
「それでのう」
「俺が気付いていないうちにというのか」
「そういうことはままにしてある」
 奇しくもそれは若奈が彼に言った言葉と同じであった。
「時にしてのう」
「鏡を見なければ気付かないか」
「鏡を見ても気付かないこともある」
 こうも述べる博士であった。
「時としてのう」
「鏡を見てもか」
「鏡は確かに自分を映し出してくれるが見るのは自分自身じゃ」
「だからか」
「一度に全てが見えるわけではない」
 人の目とはそういうものだ。視点は一つのポイントにどうしても集中してしまう。だからその時に見なくてはならないその場所のことが見えないこともあるのだ。
「決してな」
「そういうものだからか」
「君についても同じじゃ。やはり見えていないかも知れぬぞ」
「俺自身のことがか」
「人の話も聞くことじゃな」
 いささか人生論めいた言葉が出された。
「それで気付いたりもするものじゃからな」
「わかった」
 そして牧村も博士のその言葉に頷いてみせた。
「ではそうしてみよう」
「言うのはいいけれど」
「どうかな」
 彼の側に車座で座っている妖怪達が。ここでまた言うのだった。
「牧村さんってねえ」
「だようねえ」
 そのうえで牧村について話す。
「人の話聞かないような気がするし」
「何か独自の世界を持ってるしね」
「人の話を聞かないか」
「そうじゃないの?」
「そんな気がするけれど」
 こう彼について告げるのだった。
「何処かね」
「当たってるかどうかはわからないけれどさ
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