第十八話 力天その二十九
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「で、もう帰るのかよ」
「ここからさ」
「もういる必然性もない」
牧村は素っ気無く彼等に答えた。
「そちらみたいにマニアでもないしな」
「煙草吸わないのか?」
「よかったら一本ずつどうだよ」
彼等は二人に対してその煙草を箱ごと差し出してきた。見れば彼等の口にはそれぞれその煙草がある。そうして曇をたゆらせていた。
「遠慮しないでよ」
「俺達もここ位しか吸えるところないしよ」
どうやら廃墟マニアというだけでなく煙草を吸えるからという理由でもここにいるようである。
「ほら、どうだよ」
「一本さ」
「気持ちは有り難いが私はいい」
「俺もだ」
しかし死神も牧村もこう答えるだけであった。
「私は煙草は吸わない」
「俺もだ。煙草はやらない」
「まあそれならいいけれどさ」
「無理強いはしないしよ」
それを聞くと彼等も煙草を収めるのだった。そうしてそのうえでまた言う。
「とにかくさ、マニアでもないならさっさと帰った方がいいぜ」
「ここにいても楽しくないだろうしさ」
「そうだな。では帰らせてもらおう」
「俺もだ」
「そうしな。それにしてもな」
彼等の中の一人が二人に対してまた言ってきた。
「あんた達、本当に無愛想だね」
「全くだよ」
こう彼等に言うのだった。
「特にそっちのあんた」
「俺か」
「そう、あんただよ」
「あんたが特にね」
牧村に向けた言葉だった。牧村自身も彼等に顔を向けている。
「あんたそんな仏頂面だったら人付き合いもないだろ」
「彼女とかいるのかよ。それで」
「いると言ったらどうする」
若奈のことはあえて言わないのだった。
「そうだとしたら」
「信じないぜ」
「絶対にな」
これが彼等の返事だった。
「っていうかそれだけはないだろ」
「天地がひっくり返ってもな」
「そうか」
そして牧村はそれをただ聞くだけだった。
「わかった」
「ああ、まあ俺達は来る者は拒まずだからよ」
「マニアは誰でも歓迎するぜ」
そんな牧村に対してにこやかに笑って言うのだった。
「何時でも廃墟巡りを楽しもうぜ」
「ついでに煙草もな」
「そんなに煙草がいいのか」
死神は彼等がとにかく煙草を愛するのを見て述べた。
「麻薬の類ではなくか」
「おいおい、そんなのやったら身体が潰れるぜ」
「あんなのやるのは馬鹿だぜ」
「シンナーもよ」
そうしたものに関しては極めて真面目な彼等だった。必死の顔で首を凄い速さで横に振って否定する。その動作が全てを物語っていた。
「俺達がやるのはこれだけよ」
「煙草位いいじゃねえか。違うか?」
「十代で煙草吸っても許してくれよ」
「私は人間の世界の補導員でも警官でもない」
死神はそんな彼等にまた言った。
「咎める気も
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