第十八話 力天その十二
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「牧村さんも是非」
「悪いな」
礼を述べてからそのザッハトルテを受け取りそのうえで食べる。食べてみるとこのザッハトルテは確かに非常に美味いものであった。
しかもそれだけではなかった。その味は。
オーストリアのものよりも甘さが抑えられてありしかも穏やかである。それはまさに和風の味であり日本人の牧村が食べても非常に心地よいものであった。
「どうじゃ?」
「美味いな」
博士にもこう答えることができた。
「それもかなりな」
「そうじゃろう。甘さはそれ程ではないじゃろ」
「オーストリアのものよりも甘くはない」
このことも実際に言ってみせるのだった。
「だが」
「口に合うのじゃな」
「オーストリアのものよりもな」
こう答えるのだった。
「ずっとな」
「だから。日本人が作ったものだからじゃよ」
結論はここに行き着く。やはりここしかなかった。
「これはのう」
「そうか。よくわかった」
また一口食べて述べた。
「この味はな」
「どうじゃ?気に入ったらじゃ」
「今度は自分でも買って食べてみることにする」
これが彼が出した答えだった。
「そしてまた食べるとしよう」
「ほっほっほ、それは何より何より」
博士は今の牧村の言葉を聞いて破顔してみせた。
「ではな。その味を楽しんでくれ」
「そうさせてもらう。しかし」
「しかし?」
「甘いものに限らないが何かを食べたらだ」
牧村は言ってきた。今度は話が変わってきていた。
「必ず歯を磨かなければならないな」
「虫歯になりたくなかったらのう」
歯を悪くすればそれはそのまま健康に直結する。ただ痛むだけでは済まない。歯も極めて重要なのだ。寿命にまで関わる程なのだ。
「磨かなくてはいけないぞ」
「博士も磨いているな」
「抜けている歯は一本もないぞ」
ここでまた破顔して笑ってみせてきた。
「この歳になるまでのう」
「それはまた凄いな」
「歯は命じゃよ」
そしてこんなふうにも言うのだった。
「それがおかしくなれば。わかるのう」
「わからない筈がない。俺は闘う身だ」
髑髏天使としての己も語ってみせた。
「ならだ。余計にだ」
「そうじゃな。闘う者は健康管理も大事じゃからな」
「その通りだ。なら歯も常によくしておかないといけない」
具体的には磨くということである。さもなければ泣きを見るのは他ならぬ自分自身である。だからこそ健康管理は怠ってはならないのである。
「絶対にな」
「わしも同じじゃよ。磨いておるぞ」
「しかしそれでも百歳で一本も抜け歯がないのか」
「うむ」
頷いてもみせてきた。
「そうじゃ。わしの誇りの一つじゃ」
「俺もそこまで生きてそうであって欲しいものだな」
「気をつけることじゃな。よくな」
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