第十八話 力天その十
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「この本にのう」
「その本にその六柱目の魔神のことが載っているのだな」
「東欧の本じゃよ」
博士は言った。
「ルーマニア。いやこれはハンガリーじゃかな」
「ハンガリー!?」
「吸血鬼はルーマニアだと言いたいのかのう?」
「そうではないのか?」
実際にそうではないかと言う牧村だった。彼はいつも通り壁にその背をもたれかけさせそのうえで立って博士と話をしているのだ。
「吸血鬼といえば」
「確かにあの国でのものがかなり有名じゃがな」
博士もある程度はそうだと答えるのだった。
「しかしそれだけではないのじゃよ」
「それだけではないのか」
「そうじゃ。吸血鬼はルーマニアだけではない」
そしてこう言うのだった。
「ルーマニアだけではのう。東欧全体におるのじゃよ」
「東欧全体にか」
「うむ」
博士は牧村の言葉に対して頷いてみせた。
「そうじゃ。前に話したと思うが」
「そういえばそうだったか」
とりあえず記憶を辿りながら答える牧村だった。
「覚えていないが」
「まあその前提で話をするとじゃ」
とりあえずそういうことにして話を進めるのだった。
「東欧だけでなく世界中にそうした話がある」
「吸血鬼はルーマニアだけではなくか」
「左様。当然日本にもおるしのう」
我が国においてもいると語るのだった。
「本当にどの国でもおるのじゃよ」
「血を吸う魔物はか」
「うむ。そしてあのヴァンパイアはそれの主でもある」
魔神として、ということだった。
「用心するようにな。手強いぞ」
「手強いのはよくわかる」
それについては言を持たないといった感じだった。
「しかし。あいつともやがては闘わなければならないな」
「そうじゃろうな。このまま強くなればな」
「わかった」
牧村はここまで聞いてまた頷いてみせた。
「それもな」
「それでじゃ」
博士は話を変えてきた。
「昨日ケーキを食ったじゃろう」
「何故わかった?」
「僕達が教えたの、博士に」
「そういうこと」
ここでまた妖怪達が出て来た。いつもと全く変わらない能天気なまでの陽気さで話に入って来た。そうしてそのうえで牧村に対して言うのだった。
「ケーキを食べたことをね」
「言ったんだよ」
「匂いでか」
「チーズの匂いに。それに」
「モンブランだよね」
「その通りだ」
まさにそのものズバリであった。牧村も内心は隠しながら答えた。
「昨日食べたのはその二つだ」
「美味しかった?」
「それでそのチーズケーキとモンブランは」
「正直に言って美味かった」
このことを隠さずに答える牧村だった。今度は隠さなかった。
「あのケーキはな」
「いいよね、美味しいケーキが食べられて」
「全くだよ」
「しかしそういう御前達
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