第十八話 力天その九
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「それも全くな」
「闘うとかって」
未久は流石に兄の今の言葉には引くものがあった。
「かなり違うような気がするけれど」
「そうか」
「そうよ。確かにいざって時に身を守るのは大事だけれど」
それは彼女もわかっていた。しかしなのであった。
「そんな闘うとかって。違うじゃないの?」
「そうだったな」
牧村もここで気付いたのだった。これは確かにその通りだ。彼はついつい髑髏天使として言葉を出してしまっていたのである。
「それはな。違った」
「そうよ。けれどまあ」
だが兄が何であるかを知らない未久はこれで話を終わらせた。そうしてそのうえでまた話すのだった。
「いざって時に身体を守れるようにしておくのは大事よね」
「その通りだ。それはわかったな」
「ええ、よくね」
この言葉には素直に頷くことができた。
「わかったわ。いざって時は本当にね」
「容赦することはない」
そうした相手には、ということだった。
「向こうが傷を負っても正当防衛だからな」
「複数でもなのね」
「そういう奴は一人潰せばそれで終わる」
実にシビアな見方に基く言葉だった。
「一人目の前で潰れたらそれでかなり怯むからな」
「まずは最初が肝心ってことね」
「最初の奴を潰せばそれで勢いができる」
「その勢いに乗ってなのね」
「そうだ。一気に倒す」
牧村もそのことをそのまま妹に告げる。
「そのままな」
「身体を守るのにも勢いなのね」
「流れを作ることが肝心だ」
こうも妹に話していく。
「何事もな」
「そうよね。それはわかるわ」
未久も勢いや流れという言葉には納得した顔で頷くことができた。
「体操だって練習してる時とか実際の実技の時でも勢いに乗ったらそのままいけれるからね」
「相手がいれば尚更だ」
「ええ。相手をそのまま勢いの中に入れるのね」
「その通りだ。それではだ」
「ええ。何なの?」
「これで素振りは終わりだ」
ここまで動かしたところで実際に身体を動かすのを止める牧村だった。
「これでな」
「じゃあ今日の練習はこれで終わりね」
未久もここでケーキを食べ終えた。全て食べ終え皿の上には何もなくなっていた。
「お疲れ様」
「後はシャワーを浴びてケーキを食べて」
これからのことを話していく。
「それで後はストレッチをして寝るだけだ」
「ストレッチをしてそれから寝るのね」
「そうだ。それで最後だ」
最後なのだと言うのである。
「今日はな」
「何か毎日よく続くわね」
「生き残る為だ」
ラケットとサーベルを両手に持ってそのうえで玄関に向かいながら述べた。
「全てな」
「生き残る為っていうのも極端だと思うけれど」
髑髏天使のことを知らないのならばこう言うのも当然だった。
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