第十八話 力天その八
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「怒ることもないわよ」
「人には言っていいことと悪いことがある」
牧村の言葉は少しずつであるが本気になろうとしていた。
「それは覚えておけ」
「はいはい、わかったわよ」
ここでやっとわかったふりをしてきた未久だった。
「全く。私のことは何も言わないのに」
「そういえば御前今は」
「ええ。順調に付き合ってるわよ」
少し笑顔を見せてきたのだった。
「私達もね」
「そうか。確か名前は」
「近藤君よ。近藤忠臣君」
未久の口からこの名前が出て来たのであった。
「順調に交際してるわよ」
「ならいい」
「けれど特に何も言わないのね」
「言うのは父さんと母さんの仕事だ」
こう言って何でもないといった態度であった。
「俺が言うことじゃない」
「けれど若し忠臣君が悪い奴だったらどうするの?」
「御前はそんな奴は選ばない」
それはもうわかっているといったような返答だった。
「絶対にな」
「信用してくれてるの?」
「わかっているだけだ」
信用ではなく熟知であった。
「俺はもうそれはな」
「そうなの。わかってるの」
「そうだ。御前は人を見る目はある。決して悪い奴を選ばない」
「ふふふ、わかってるじゃない」
妹も兄の今の言葉を受けて楽しそうに微笑んだ。
「そうよ。私は絶対に変な人間とは一緒にならないから」
「だが若し相手が豹変したらどうする?」
「その時はあれよ。やっつけてやるわよ」
言葉が強いものになった。
「一撃でね。伊達に体操部じゃないわよ」
「体操部も強いのか」
「強いわよ。いつも全身鍛えてるし身体は物凄く柔らかいし」
こう兄に言うのだった。強い声で。
「最強に近いのよ。バレリーナだってそうじゃない」
「バレリーナの脚力は尋常じゃない」
牧村はこのことは知っていた。バレリーナは常に足をつま先で使いそのうえで動いている。そして基礎練習を欠かさない。いつも足を使っているからその力も尋常なものではないのである。
「それは知っているがな」
「体操だって同じよ。男の子が下手なことしてきたら」
「その時はか」
「急所を一撃よ」
悪魔的なまでに不敵な笑みを浮かべての言葉であった。
「もうそれで男の子は終わりでしょ」
「終わりも何もそれで人生終わりだ」
牧村はこうまで言うのだった。
「そこを狙われたら男は終わりだ」
「そうでしょ。だったら余計にね」
「あとは喉を狙うのもいい」
闘いの経験からの言葉である。
「そこを突いてもやはりな」
「終わりなのね」
「これは男だけじゃない。女もだ」
そしてそれは全体だと言うのである。
「喉はかなり効く」
「あれよね。ブッチャーさんの地獄突き」
「それだ。それを決めればいい」
「わかったわ。それじゃあ喉も
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