第十七話 棺桶その十六
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「それでは髑髏天使の相手は私が」
「うむ、頼むぞ」
「ストーンカか」
ここでやっと死神が口を開いた。
「かつてバルカン半島を我が物顔で荒らし回った雄牛の魔物だな」
「そうだ、死神よ」
紳士もまた死神に対してはじめて声をかけた。
「これがそのストーンカだ。髑髏天使の相手のな」
「私の相手ではないのか」
「残念だが貴様の相手をするつもりは今はない」
彼はまた言った。
「そこで見ているのだな」
「では無理にでも相手をしてもらおう」
やはり彼は闘うつもりだった。
「髑髏天使よ。貴様は下がっているのだ」
「言ってくれるな。指名されたのは俺だ」
そして牧村もまた退く素振りは一切なかった。
「それでどうして下がる必要があるのだ」
「では。何としてもだな」
「そうだ。何度も言うが退くつもりはない」
顔を死神の方にやや向けて目でも告げていた。
「決してな。例え刃を交えることになってもだ」
「ではこちらもだ。いいな」
死神もまた顔を彼の方にやや向けて目でも告げてきていた。二人はまさに一触即発であった。闘いが今まさにはじまろうとしていた。だがここで。
「相変わらずの闘争心だな」
ここでまた一人出て来た。牧村から見て左手からあの青年が出て来た。そうしてそのうえで言葉を出してきたのであった。
「貴様は」
「遊びに来たというわけではないな」
死神はその青年を見て言うのだった。
「どうやら。闘いに来たのか」
「そうだ。仲間を迎えに来ただけではない」
「バジリスク、久し振りだな」
紳士は青年に顔を向けて口元で微笑み挨拶をするのだった。
「元気そうで何よりだ」
「そちらもな。早速魔物を出すのか」
「貴様もな。用意してきたのだな」
「一応用意はしていた」
青年はその言葉に答える。
「だがしかしだ。必要になるとはな」
「私の相手ということか」
「そうだ。出て来るのだ」
彼が言うとだった。紳士が背にしている川からそれが出て来た。それは禍々しい老人の顔に蝙蝠の翼と蠍の尾を持つ獅子だった。剥き出しになった歯は全て牙になっており三重に連なっているそのおぞましい口を見せていた。
「マンティコアか」
「死神、貴様の相手はこれだ」
青年は死神に顔を向けて告げた。
「これならば不足はあるまい」
「そうだな。相手としては充分だ」
死神もとりあえずは不足のない声で彼に返した。
「マンティコアならな」
「よし。ではこれで話は決まりだ」
青年は静かに告げた。
「俺はこれで去らせてもらう。ヴァンパイアよ」
「うむ」
紳士もまた彼の言葉に頷いてきた。
「では私もまたな」
「仲間達が待っているぞ」
青年はこうも彼に対して告げた。
「では行くぞ」
「わかった。では髑髏天使に死
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ