SAO編
四話 従兄弟同士
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だ。顔が現実世界の顔なのですぐ分かった。
あの後、俺達は特に何ら問題なくこの村まで辿り着く事が出来た。
キリトも俺と同じく、ゲーム内でスタートが重要である事を知っていてこの村を目指したらしい。が、運悪くあのワームに見つかり戦闘を余儀なくされたのだそうだ。
宿の外はもうとっぷりと暗くなっており、SAO初めての夜が過ぎようとしている。
始まりの町に居るであろう一万人近い人数の人たち。彼らも個々の夜を過ごすのだろうが、まぁ大半は大混乱するだけ。泣くか叫ぶか呆然とするかして朝を迎えるだろう。
「大変なことになったもんだなぁ……」
「……あぁ」
誰に言うでもなく嘆いた俺の声にキリトが答える。
正直、あのアナウンスからは此処まで一気に来たので、今更ながら大変な事態に巻き込まれたという実感が湧いてきた。
ゲームオーバー一発でこの世からも退場のデスゲーム。
正に過去に例のない事態だと言っていいだろう、世界的にも俺の人生的にも。
ふと、前に座る従兄弟を見てみる。
女にも見えるが、世間一般的に見て整っている部位に入るだろう顔の少年は視線をじっと目の前の「紅茶っぽいお茶」に注ぎ、何かを考えているようだった。
「……大丈夫か?」
「……え?」
「さっきから、ずっと心此処に在らずって感じだぞお前」
「あぁ……ゴメン」
「まぁ、気持ちは分かるがな、俺もこんなことになるとは思ってなかったし。」
そう言って俺は天井を仰ぐ。此処まで予想もしなかった事態に遭遇すると、なんと言うか、逆に何も言えなくなる。
何というか、『理解はしているし、頭では現実だと受け入れているにも関わらず現実味が未だに薄い。』という奇妙な状態だ。
「そうじゃ、無いんだ」
「ん?」
始めて自分からしゃべりだしたキリトに俺は再び視線を向け、話を聞く姿勢になる。
「俺、始まりの町に友達を置いてきたんだ。」
「……」
「クラインって言ってさ、気の良い奴で、VR初心者だからって俺にレクチャー頼んで来て……」
「それで?」
「アナウンスも一緒に聞いた。それで……俺はクラインにも一緒に付いて来るように言ったんだ。けど、クラインは他のMMOで知り合って一緒に来た仲間たちを見捨てられないって言って、付いてこなかった。結局俺はこっちで始めて出来た友達を切り捨てて、前に進んだ。」
「成程な。」
「俺はあくまで利己的に行動して、自分だけのために今も此処にいる……」
そこまで言ってキリトはまた黙りこむ。
要は後悔しているのだろう、たった数時間前の自分の行動を。
元々こいつは、あまり人と交わるのが得意な奴ではない。中学校でも友人と呼べる奴は数人しかいなかったようだし、高校に入ってからも一学期は話し相手になる奴を見つけるのにかなり苦労して
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