第十七話 棺桶その四
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「そうだったな」
「そうじゃ。そもそもその生まれからして奇怪じゃ」
博士は今度はバジリスクの生まれについて語る。
「雄鶏の卵をヒキガエルが温めそのうえで生まれるのじゃよ」
「そのうえでか」
「左様じゃ。これも知っておるな」
「それもな」
彼はそれも知っているのだった。
「読んだ。確かに有り得ない生まれ方だな」
「魔物というものは大体そうじゃな」
博士はこうも言うのだった。
「有り得ない生まれ方をしたり生き方をしておるものじゃ」
「そういうものか」
「まあ妖怪もそういうのがおるがのう」
「ああ、僕のことかな」
「僕かな」
「私じゃないの?」
ここですねこすりだのわいらだの天井さがり等が出て来る。とりわけ天井さがりは逆さまに長い髪を持った女の顔が出ていてすこぶる不気味である。
「何か心当たりが多いけれどね」
「そもそも僕どうやって生まれたんだっけ」
「私も。ちょっと覚えてないわ」
「結局闘うか闘わないかの違いじゃからな」
博士はそんな彼等を見ながら話すのだった。
「魔物と妖怪なぞな」
「そうだな。そういえば連中は人を襲うのじゃなかったのか?」
「それは力を求めてじゃ」
「力をか」
「人間は一人一人が霊力を持っておる」
彼は言うのだった。
「それを得る為にな」
「そして俺と闘う理由もか」
「全ては力じゃよ」
このことも語る博士であった。
「全てはのう」
「そういうことだな。魔物は力を求めるもの」
「うむ」
「だからこそ魔物なのか」
あらためてこのことを知る牧村だった。
「そして俺はその魔物を倒す」
「髑髏天使じゃな」
「そうだ。俺は髑髏天使だ」
言いながらその手をじっと見るのだった。右手の手の平をだ。
「紛れもなくな」
「その通りじゃ。しかしグールとの闘いも終わったのじゃな」
「手強いことは手強かった」
その闘いのことを思い出しての言葉である。
「だが。弱点に気付いた」
「それで勝ったというのじゃな」
「逆に言えば弱点に気付かなければ負けていた」
こんなことも言うのだった。
「それでな」
「そうじゃが何でも弱点はあるものじゃぞ」
博士は少しばかりネガティブに見える今の牧村の言葉に対して穏やかに声をかけた。
「何にでものう」
「では俺は勝つべくして勝ったのか」
「その通り」
そしてこう言うのであった。
「弱点を見抜くだけの力があったということじゃよ」
「運ではなく、か」
「運でそうそう見抜くものではないのじゃよ」
また穏やかな声で語ってみせるのだった。
「わしはそう思うがのう」
「閃きもか」
「閃きもまた実力じゃ」
博士はそれもだというのだ。
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