第十七話 棺桶その三
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「それでいいか」
「ええ、私は別にね」
それに賛成したのはまず女であった。
「それでいいわ」
「俺もだ」
そして次は男であった。
「行きたいなら行け。止めはしない」
「私もです」
老人も同じ意見であった。
「また髑髏天使だけでなく死神も出て来るでしょう。それならば」
「ああ、僕もだよ」
子供もまたにこにことしながら青年に告げた。
「見てるだけでいいから。頑張ってきてよ」
「そうか。それならいいな」
「ええ」
「行くといい」
魔神達はそれぞれ彼に話す。これでこの話は決まりであった。
しかしであった。決まったのはこの話だけであった。子供は相変わらず朗らかに笑ったままそのヒョウモンダコに噛まれたまま言うのであった。
「何かさ、不思議だよね」
「その蛸が?」
「うん。毒がある蛸なんてね」
こう女に答えるのだった。
「本当にね。珍しいよ」
「髑髏天使と同じです」
そしてここで老人がまた言うのだった。
「彼と同じなのですよ」
「髑髏天使と同じって?」
「突然変異と申しましょうか」
老人は髑髏天使をこう評するのであった。
「五十年に一度現われ我々の毒となる」
「そして僕達はその毒を手に入れようとして」
「闘うというわけね」
彼等はそれぞれ言うのだった。
「じゃあ。ここはバジリスクも出るってことでね」
「そうだ。既に魔物の用意はした」
彼はまた話した。
「既にな」
「了解。じゃあ見させてもらうよ」
子供が笑顔で彼に言う。言いながら蛸から手を放してそのうえで手を抜き出す。そうしてそのうえでこれからのことを楽しく想像するのだった。
牧村はまた博士の研究室にいた。話は当然魔神に関するものであった。
「今度はそれじゃったか」
「そうだ。バジリスクだ」
牧村は部屋の壁にもたれて立ちながら博士に述べていた。
「それが出て来た」
「これで五人目じゃな」
「その通りだ。これでな」
牧村はまた彼の言葉に頷くのだった。
「五人目だ。あと七人だったな」
「左様。そして知っていると思うが」
「バジリスクのことだな」
博士が何を言うのかはもうわかっていたのだった。
「あの魔神のことか」
「そうじゃ。あれは尋常ではない魔神じゃ」
博士は怪訝な顔になって述べる。
「それは確か」
「はい、どうぞ」
ろく子がにこりと笑って博士に一冊の本を差し出してきた。見ればそれは黒い厚い表紙の書であった。やはりその書もかなり古いものであった。
「こちらですね」
「そうじゃ。その書じゃよ」
博士はろく子の差し出したその書を受け取って笑顔を見せる。
「この書に書かれておるのじゃよ」
「そうか。それにか」
「その通りじゃ。ここにある」
博士はまた言うのだった。
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