第十六話 青年その十三
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「せめて苦しまないようにしてやる。一撃でな」
「まだだ」
しかし髑髏天使はその伸ばされてきた両腕を見てもまだ言うのだった。
「まだだ。俺はだ」
「観念しないというのだな」
「生憎だが俺は諦めの悪い男だ」
そしてこう言うのだった。
「そう簡単にはな。諦めはしない」
「ではどうするのだ?」
「とりあえずは払わせてもらう」
言いながら両手の剣をそれぞれ一回ずつ横薙ぎに払った。そうしてそこから鎌ィ足を放ちそれで魔物の両腕をまた断ち切ったのだった。
「こうしてな」
「意味がないとわかっているのにか?」
「さてな」
今の問いにはあえて答えないのだった。
「意味があるのかないのかはもうすぐにわかる」
「諦めたわけではないな」
これは髑髏天使のどの髑髏の奥の目の光とそして言葉の色を見てわかることだった。
「では破れかぶれになったか」
「残念ながらそうでもない」
それも否定する髑髏天使だった。
「生憎だがな」
「それも違うというのなら何だ?」
「貴様は確かに死んでいる」
それはもう言うまでもないことであった。
「しかしだ。死んでいても己の言葉で語り動いている」
「それがどうかしたのか?」
「そこだ」
それだと言うのである。
「そこだ。貴様の弱点はどこにあるのだ」
「何を言うかと思えば」
グールはそれを聞いてせせら笑うのだった。
「その程度か。どうやら貴様に対しては俺が買いかぶっていたようだ」
「買いかぶっていたというのか」
「そうだ。貴様は所詮その程度だ」
こう言うのである。
「所詮な。所詮俺の両腕を断ち切ってもすぐに元に戻る」
実際にその両腕は這っていた。そうしてまたくっつこうとしていた。
「このようにしてな。幾ら斬っても無駄なこと」
「確かに貴様の身体を斬っても意味はない」
髑髏天使は再び両腕の剣を構えながら言うのだった。
「しかしだ。貴様のある部分だけは違う」
「ある部分だと?」
「それを今から見せよう」
言いながらその構えに力を込めていくのだった。風が彼の周りを覆っていく。
「行くぞ。この風の力」
「風でも火でも無駄だと言った筈だがな」
「無駄ではない。ではここで決める」
左手だった。そこに持っているサーベルを振るいそこから鎌ィ足を放った。それは一直線にグールに向かう。だがそれは今まで通りだった。
「馬鹿が。何度やろうともそれはだ」
グールは最早避けることすらしない。もっともそれは最初からであったが。そしてその攻撃を受けた。ただしそれは今までとは別の部分であった。
「何っ!?」
「やはりな」
グールの今の言葉を受けて会心の声をあげる髑髏天使だった。
「弱点のない者なぞ存在しない」
「俺の弱点・・・・・・」
「貴様も然りだ
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