第十六話 青年その九
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「いきなりそう来るか」
「そうだ。既に魔物は用意してある」
青年はその黒く鋭い目をそのままにして彼に告げてきた。
「来るか」
「断る権利は?」
「それは貴様にある」
思った以上に突き放した言葉であった。
「貴様の好きにすればいい。来るのも来ないのもな」
「その言葉は余裕か」
牧村は己が青年の今の言葉に感じたもののうちの一つだけをあえて彼に出してみせた。
「何時でもいいというふうに」
「俺は闘いは好きだ」
青年もこれは言う。
「しかしだ。それは相手があってのものだ」
「相手がか」
「そうだ。そして相手にその気がないと面白くとも何ともない」
こうも言うのだった。
「全くな」
「では俺に闘う気があるかどうかか」
「あればそれでいい」
今度の言葉はこれであった。
「しかしなければ俺は去る。それだけだ」
「去るのか」
「そうだ。どちらだ?」
「俺は髑髏天使だ」
まずはこう述べる牧村だった。
「魔物を倒す存在だ。何時でもな」
「では。戦うのだな」
「そうだ」
こう言うのだった。それ以外には何もないのだった。
「闘う。何なら貴様ともな」
「俺ともか」
「どうする?俺は別に構わないが」
強気の言葉だった。その言葉と共に一歩前に出る。少なくとも気迫では負けていなかった。その気迫で以ってそのまま彼に向おうとさえしていた。
「どうするのだ?」
「焦るな。その気ならだ」
「何だ?」
「ついて来い。既に相手は用意している」
ズボンのポケットに手を入れてそのうえで踵を返してから述べた言葉だった。
「既にな」
「場所は何処だ?」
「ここでは人目がある。場所を変える」
言いながら歩きだしたのだった。
「それでいいな」
「俺は何処でもいいのだがな」
「それでは貴様自身が困るだろう」
背は向けたままだがそれでも言葉は出すのだった。
「違うか」
「そうだな。俺も髑髏天使としての姿を見せるつもりはない」
彼が髑髏天使であることを知っているのは人間では博士だけだ。言葉を変えれば彼以外に知られてはならない。そういうことだった。
「全くな。不都合なことでもある」
「我等魔神にとって貴様の人の姿なぞどうでもいい」
青年はまた言ってきた。
「どうでもな。とにかく闘うのなら来い」
「わかった」
こうして彼は青年に案内されてそのうえである場所に向かった。そこは公園だった。夕暮れの誰もいない公園であらためて二人だけになるのだった。
周りの滑り台や砂場やジャングルジムにも誰もいない。その完全に静かになった場所で彼は青年と向かい合う。そしてそのうえで彼に尋ねるのだった。
「ここで闘うのか」
「そうだ。ここでだ」
青年は牧村に対して答えた。二人は鋭い目で睨み合い続け
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