第十六話 青年その八
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「決してな」
「それはわかった」
わかりはする、という意味である。
「しかしだ。譲りはしない」
「ならその場合はか」
「そうだ。俺はその場合でも迷いはしない」
言いながら今にも変身しようと身構える。それこそが彼の意思表示に他ならなかった。
「ここでもな」
「安心しろ。今はそのつもりはない」
しかし今度は自分から闘いを避ける死神だった。
「貴様と闘うつもりはな。ただ話をしたかっただけだ」
「それだけか?」
「それだけだ」
感情は見せない素っ気無い口調だった。ここでも。
「さて。それではだ」
「どうするつもりだ?」
「話は終わった」
こう告げたうえで牧村に背を向けるのだった。
「これでな。それではだ」
「帰るのか」
「また会う」
背中越しに彼に告げるのだった。
「それではな」
「貴様も変わった奴だな」
牧村は去ろうとするその死神に対して告げるのだった。
「俺の敵でもなければ味方でもない」
「貴様が敵だと思えば敵だ」
「しかし味方ではないのだな」
「それは間違いない」
こう言うのである。
「決してな」
「決してか」
「貴様が何かすれば容赦しないが少なくとも貴様を助けることはない」
この考えは一環しているのだった。彼の中ではだ。
「それも覚えておくのだな」
「やはり貴様は変わっている」
話を聞いたうえでまた言う牧村だった。
「面白い奴ではあるな」
「貴様もな」
やはり牧村に背を向けたままだがそれでも彼に告げる死神だった。
「ではな。これでな」
「また会おう」
最後にこう言葉を交えさせてそのうえで別れる両者だった。牧村はそのままサイドカーに乗りそのうえで家に帰ろうとする。家に着きサイドカーから降りヘルメットを脱いだ。するとその彼の目の前に見たこともない浅黒い彫の深い精悍な顔をした青年がいた。白い背広を着ており黒い瞳の視線は鋭い。頭は短く刈っている。
その彼が目の前にいるだった。牧村は彼を見て言うのだった。
「誰だと尋ねるのは愚問か」
「流石だな。わかっているのか」
「わからない筈がない」
こう青年に返す牧村だった。
「わざわざ俺の前に出て来るということはだ」
「そうだ。魔神だ」
彼の方から名乗ってきたのだった。
「十二魔神の一人バジリスク」
「バジリスクか」
その名を聞いて彼が何なのかすぐにわかった牧村だった。
「確か八本の足に鶏冠の冠を持つトカゲだったな」
「俺の真の姿も知っているのか」
「そして全身が毒に満ち見るもの全てを石にするという」
「少なくとも人の姿でそれはないがな」
それはないというのだった。
「しかしだ。魔神の一人だ」
このことは強調するのだった。
「覚えておくことだ」
「魔神の一人なら忘れ
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