暁 〜小説投稿サイト〜
髑髏天使
第十六話 青年その六

[8]前話 [2]次話

「クレープだよ」
「クレープね」
「ああ。バナナとアイスクリームのクレープ」
 注文についても伝えるのだった。
「それを一つね」
「わかったわ。じゃあ今から作るわね」
「ああ、頼むよ」
 こう自分の妻に告げてから顔を牧村に戻す。そうしてまた彼に対して笑顔で言うのだった。
「それでうちのお菓子はね」
「ああ。何かあるのか?」
「最近未久にも仕込ませているんだ」
 こう彼に対して語ってきた。
「最近ね」
「そうなのか。あの娘が」
「いい感じだよ、素質があるんだろうね」
 またしても親馬鹿であった。これはどうしても離れなかった。
「本当にね。それでだよ」
「ああ」
「はい、クレープ」
 ここでその注文したクレープが彼の前に出された。黄色い包みの上にチョコレートがかけられている。そして中の膨らみも確認されるのだった。
「どうぞ」
「早いな」
「安くて早くて美味い」
 マスターはまた笑顔で彼に話した。
「それがうちの店のモットーだからね」
「そういえばそうか」
「そうだよ。だからほら」
 食べるように勧めるマスターだった。
「今日のも最高に美味いよ」
「そうか。じゃあ楽しませてもらう」
「どうぞ」
 こんな話をしながら食べる彼だった。それが終わってから店を後にする。店の前に停めてあったサイドカーに乗ろうとする。しかしここでまたあの男が目の前にいるのだった。
「貴様か」
「暫くぶりだな」
 こう彼に声をかけてきたのだった。
「元気でいると思っていたがな」
「少なくとも美味い茶と菓子は楽しんだ」
 今食べ終えたそのロシアンティーとクレープのことに他ならなかった。
「貴様もどうだ?」
「悪くはないな」
 彼もそれはいいとするのだった。
「しかしだ。今はいい」
「いいのか」
「甘いものを食べるのは今はな。いい」
 また言う彼だった。
「それよりもだ。私が何故ここに来たのかわかるか」
「おおよそ察しはつく」
 サイドカーを挟んで向こう側にいる彼に対して言葉を返した。表情を変えずに。
「闘いか」
「少なくともその話題だ」
 こう答える彼だった。やはり表情も変えずにだ。
「また魔神が日本に来た」
「またか」
「そう、まただ」
 彼は言うのだった。
「魔神がな。また来た」
「そうか。またか」
「やはり貴様が呼び寄せているようだな」
 また言う彼だった。
「貴様のその髑髏天使としての力の増大がな」
「俺が魔神達を呼び寄せているか」
「私はそう考えるようになってきている」
 フードの向こうから彼を見つつ告げた言葉だった。
「どうやら貴様のその強くなっていく力がだ。そうさせているのだ」
「俺の力が強いのならだ」
 そのフードの彼にまた言い返すのだった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ