第十六話 青年その四
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「またそういう年頃だしね」
「俺は別に」
「いやいや、わかってるから」
牧村の否定しようという言葉は出される前に打ち消してみせた。
「もうね。態度でわかるんだよ」
「態度でか」
「そうだよ。自分はあれだよ」
関西ならではの二人称もまた出て来た。
「言葉にも顔にも出さないけれど」
「ああ」
「それだけで完全に消せるわけじゃないんだよ、人間ってものはね」
「さっき言ったオーラか」
「そうさ。それでもわかるんだよ」
またオーラを話に出してきたのだった。
「何となくだけれどね。高校の時からいつもこの店に来ていてくれたよね」
「そういえばそうか」
とぼけるふりをしようとしたがそれができなかった言葉だった。こうした場合歳というものがものを言い若い側はどうしても不利になってしまう。
「その時いつも未久見てたじゃない」
「自覚はないが」
「自覚はなくてももう視線がいつもそっちにあったから」
だからわかるというのだった。
「もうカウンターにいたらカウンター見ていて」
「そうだったのか」
「それでウェイトレスの時はお店の席のところ見て」
そういう具合だったのである。
「もういつも見ていたじゃない。視線だけでね」
「自覚はなかったな」
「自覚はなくても出るんだよ」
また顔を崩して言うマスターだった。
「そういうのはね。もうね」
「出るか」
「出るさ。誰だってね」
今度は誰でもというのだ。
「わしだってそうだろうし未久もね」
「あいつはそういうふうだろうな」
牧村も未久はどうかと考えてみて確かにそうだと心の中で頷いた。
「表情もはっきりしているからな」
「それで気付いたら二人共付き合っていたからねえ」
マスターの顔が困ったような苦笑いになった。
「これは予想していなかったけれどね」
「それはか」
「全く。責任取ってもらうよ」
何気に怖い言葉を出す。
「うちの娘は高いよ」
「値段の問題じゃないな」
牧村も何気にのろけを入れてきた。
「あの娘はな」
「何だ、わかってるじゃないか」
マスターも彼の今の言葉で顔を崩した。
「親が言うのも何だけれどあんないい娘今いないよ」
「この世に二人としてな」
「実は芸能プロダクションからスカウトが来ないか心配なんだよ」
満面の笑顔でさも困っているように言うのだった。
「もうね。あそこまで可愛いとね」
「それは俺も同じだ」
牧村もこんなことを言い出してきた。
「あれだけの娘は滅多にいない」
「わかってるじゃないか。いや、わしもね」
親馬鹿は続くのだった。
「本当にこのままいったらどれだけ美人になるのかって不安でね」
「その通りだ。俺は幸せ者だな」
「君みたいな幸せ者はいないよ」
牧村を指し示し
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