第十五話 子供その八
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「そうじゃ。DVDも買ってのう」
「それもか」
「行くついでじゃ。何でも買うぞ」
博士は明るく言い出してきた。そこには何の迷いもない。
「店にあってわしが持っていないものは何でもな」
こう言って牧村のサイドカーの横に乗り店に向かう。店に入ると早速スキップをするようにして明るい足取りでジャニーズのタレントのコーナーに向かう。そうしてCDを次々と手に取っていくのだった。
牧村は見ているだけだった。特に何かを買うという素振りは見せない。しかしここで彼に対して声をかけてきた者がいたのであった。
「ねえ」
「むっ!?」
子供の声だった。牧村はすぐにその声に反応を示した。
「君は買わないの?」
「君?」
「そう、君だよ」
また彼に声をかけてきた。
「君は。買わないの?」
「買いたいものはもう見つけた」
その声に答えるのだった。
「もうな」
「そうなの」
「そして御前は」
その子供の声に対して問い返した。
「買いたいものは買ったのか?」
「ううん」
笑った声で彼に答えてきた。
「それは最初からないよ」
「そうか」
「ここに来たのは別の理由からなんだ」
「俺か」
「わかるんだ」
今の牧村の言葉に声を笑みにしてきた。
「やっぱり」
「わからない筈がない」
牧村は落ち着いた言葉で彼にまた返した。
「それもな」
「やっぱり髑髏天使だから?」
「そうだ。そして貴様は魔物だな」
「ああ、それは違うよ」
そうではない、これは否定してきたのだった。
「僕は魔物じゃないよ」
「魔物ではない。ならば」
彼はその言葉から子供の声の主が誰であるのかわかったのだった。
「魔神か」
「そうだよ。僕は魔神」
また自分から名乗ってきたのだった。
「十二魔神の一人だよ」
「やはりそうか」
「名前はクマゾッツ」
言葉と共に牧村の前に姿を現わしてきた。青いジーンズを穿いた如何にも無邪気そうな、黒い髪のあどけない顔をした子供であった。
「それが僕の名前だよ」
「クマゾッツか」
「そう。中南米のね」
また彼に語ってきた。
「それが僕だよ。わかったよね」
「名前は覚えた」
牧村は鋭い声で子供に告げた。
「その姿もな」
「じゃあ。そういうことだから」
ここまで話すと牧村に対して踵を返した。
「またね」
「もう帰るのか」
「うん。僕の話は終わったから」
こう言って彼に背を向けた。
「またね。これでね」
「貴様は闘わないのか」
「魔物のルールは知ってるよね」
牧村の今の言葉を受けてまた顔と身体を向けてきた。そのうえで彼に対してまた言ってきたのだ。そのあどけない笑みをそのままにして。
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