第十五話 子供その六
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「それはな」
「ああ、やっぱりそうなんだ」
「動かす量が半端じゃないからだよね」
「そうだ。幾ら食べてもな」
足りないというのだ。今は。
「何を食べてもすぐに身体になっていく。そんな気がする」
「うむ。それはいいことじゃな」
博士も今の彼の言葉を聞いて満足した顔で頷いた。
「太るとのう。どうしても身体の動きが落ちるものじゃからな」
「それは注意しているが食べることは制限はしていない」
今の彼はそうだった。確かに身体のいいものをバランスよく食べるようにしているが量はかなり取っている。また甘いものはいつも通りなのである。
「むしろ足りない気がする」
「足りないんだ」
「幾ら食べてもな」
また妖怪達に対して述べた言葉だった。
「足らない。これが結構辛い」
「君の歳でしかもそれだけ動いておればそうなるものじゃ」
博士はまずは人間としての彼について述べた。
「それにじゃ」
「髑髏天使としてか」
「うむ。人間の姿から髑髏天使になる」
その時の変身のことだった。
「その時にじゃ。変わるじゃろ」
「エネルギーを使うということか」
「左様。君は今まで気付いていなかったようじゃがな」
「意識もしていなかった」
こう博士に答えたのだった。
「そんなことは別にな」
「そうじゃろうな。それはわかる」
博士はまた彼の言葉に頷いたのだった。察していたような顔で。
「君を見ていればのう」
「そして闘いでか」
「そもそも闘いそのものがかなりのエネルギーを使うものじゃ」
これは言うまでもなかった。命をかけた勝負である。しかも剣を振るい空を舞う。それで体力を使わない筈がないのである。牧村も普段はそれの為に鍛えているのだから。闘う為に。
「それもあるからのう」
「その時のエネルギーもか」
「今のままでとりあえず補充はできているようじゃが」
また彼を見ての言葉であった。
「それでもじゃ。足らないということがあっては駄目じゃぞ」
「わかっている」
博士の言葉に対してあらためて頷いたのだった。
「それはな」
「よいことじゃ。さて、菓子を食ったらじゃ」
「どうするのだ?」
「サイドカーで来ておるな」
彼がいつも乗っているあのサイドカーだ。博士も改造を施したあのサイドカーだ。
「あれに乗せてくれんかのう」
「運転できるのか」
「いや」
今の牧村の言葉には首を横に振ってみせた。
「それはできんよ。そもそも百歳の爺がサイドカーなんぞ乗れるものか」
「それもそうだな」
牧村も話を聞いてその通りだと思った。百歳でここまで矍鑠な人間も珍しいというのにだ。
「それでは。横にか」
「連れて行って欲しいところがあるのじゃよ」
少しにこりと笑って彼に言ってきた。
「実はのう」
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