第十四話 能天その十七
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「だからよ。覚悟するのね」
「ふん。水の中といってもだ」
逃げるつもりはなかった。その翼をはばたかせようとする。しかしだった。
空中にいる時程その翼は動かない。思ったより鈍い。彼はそのことに気付いたのだった。
「水のせいか」
「どうやらそのご自慢の翼も水の中では満足には動けないみたいね」
グールもそれを見てせせら笑うようにして言ってきた。
「当然といえば当然ね。翼は空のもの」
そしてその笑みで彼に言うのであった。
「水のものではないわ」
「くっ、確かにな」
髑髏天使もこのことを認め歯噛みするしかなかった。
「その通りだ」
「けれど私は」
ここで姿を戻してきた。あの巨大な鹿の頭の魚に。
「この姿があるわ。だから」
「俺に勝てるというのだな?」
「話通り頭は切れるのね」
この場合この言葉は褒め言葉ではなかった。
「嬉しいわ。そういうことよ」
「だからといって貴様に負けるつもりはないがな」
「どうかしら。自慢の翼だけでなく炎も使えないのに?」
彼の権天使としての力も把握しているのだった。
「それでどうやって私に勝てるのかしら。この水の中で」
「火も翼もなくとも」
臆した言葉ではなかった。
「俺は貴様に勝つ。これだけは言っておく」
「その気概はいいわ。けれど」
グールの言葉はあくまで勝ち誇ったものだった。既に闘う前から勝利を確信していた。己のことと今の髑髏天使のことをわかっているからこそだった。
「それだけで勝てはしないわよ」
言いながら襲い掛かる。その巨体で体当たりを仕掛けようとする。髑髏天使はそれを翼を収めすんでのところでかわしたのだった。
攻撃をかわされたグールは髑髏天使の反対側に出た。そこから身体を反転させつつ再び彼に対して向かい合ってきたのであった。
「今のをかわしたのね」
「いい攻撃だ」
髑髏天使も今のグールの体当たりは素直に賞賛する。
「しかしだ。当たらなければ」
「そうやってかわしているだけでも疲れが溜まってくるわ」
だがグールにとって今彼が攻撃をかわしたことも想定の範囲内のことだった。今の余裕に満ちた言葉がそれを何よりも物語っていた。
「そうすれば。その時は」
「かわしきれなくなるというのか」
「既に狸力との闘いで相応の気力と体力を消耗している筈よ」
このことまで頭に入れているのだった。
「だから。その時にこそ」
「待つというのか」
「私はその時に狙えばいいだけ」
声が笑っていた。
「それだけよ。さあ覚悟するのね」
「ふん。しかしだ」
今の状況を知ってはいてもだからといってそれで諦めたりはしない髑髏天使だった。鋭い言葉も強い視線もそのままであった。
「俺は敗れるつもりはない」
言いながらまた襲い掛かってきたグー
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