第十四話 能天その十四
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「ぐうっ・・・・・・」
胸にその衝撃を受けた牧村は空中高く吹き飛ばされた。そのうえ身体のバランスを崩し空中できりもみ回転になりそのうえで落下した。すんでのところでバランスを取り戻し翼を動かして空中に浮かび上がる。かろうじてそのままの落下は防いだのだった。
「それが貴様の力か」
「はい」
また紳士的に応える狸力だった。
「その通りです。実は中国では私は」
「どうなのだ?」
「災いを呼ぶ魔物とされてきました」
こう着地した髑髏天使に語るのだった。
「実は。そうだったのですよ」
「災いか」
「はい。災いといっても色々なものがありますね」
「そうだな」
一口に災いと言ってもだ。それこそ星の数程ある。牧村もそれはわかっていた。
「それはその通りだ」
「中国の長い歴史において」
話は今度は彼の国の歴史に関するものになった。
「多くの普請が行われてきました」
「普請か」
「はい。万里の長城然り大運河然り」
前者は本格的にはじめたのは秦の始皇帝であり後者は隋の煬帝である。どちらも歴史上においては暴君であるとされとかく何かと民衆を建築に駆り出したとされている。
「その普請は数多いものでした」
「それは知っている」
髑髏天使もまた知っている話であった。中国の長い歴史については彼も知っているのだ。
「しかし。それが貴様とどう関係があるのだ」
「私が姿を現わすとです」
狸力は彼に説明をしてきた。
「その場所に普請をもたらすのですよ」
「それにより民衆が苦しむというのだな」
「そうです。長城を作り上げるにあたって多くの犠牲が払われました」
今のように機械がある時代ではない。全て人力だ。ならばそれにより多くの犠牲が生じるのは常であった。しかも駆り出されることにより農作業や商業がおろそかになってしまう。かつての建築というものはそれだけ民衆にとって重い負担であったのである。
「それをもたらしてきたのが私だったのです」
「不幸をもたらす魔物か」
「そうなります」
己についてこう定義したのだった。
「そしてこの声はその不幸を知らせる声」
「普請を知らせる不吉の声か」
「また作り上げたものを壊すこともできます」
こうも述べてきた。
「それが私の武器なのです」
「わかった。だからこそ貴様は魔物なのだな」
「その通りです。それではまた参ります」
豚の目で彼を見据えながらまた言ってきた。
「いざ」
「ならば」
彼がまた仕掛けてきたのを見てすぐに動いた髑髏天使だった。大天使から権天使に変わる。その鎧と髑髏が紅に染まった。
そしてすぐに己の前に炎の壁を出した。それで狸力の炎を防いだのだった。
「炎の壁ですか」
「咄嗟に出したがな」
その通りだった。今のはまさに咄嗟に出したも
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